理解を超えたスーパーカー ランボルギーニ・ウラカン・ステラート 最後を飾る至高の喜び(1)

公開 : 2023.10.09 19:05

悪路のために改良を受けたスーパーカー、ステラート 過酷なオフロードを堪能 ウラカンの最後を飾る見事な仕上がり 

これまでの理解を超えたスーパーカー

ランボルギーニウラカン・ステラートを運転していると、今どんなクルマに乗っているのかわからなくなる時がある。ある程度の時間を、一緒に過ごしても。

ミドシップされるのは、8500rpmまで回る自然吸気のV型10気筒エンジン。手元に伸びているのは、バナナくらい大きいシフトパドル。ルーフは見下ろせるほど低い。これらは間違いなく、スーパーカーの特長だろう。

ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)

しかし、乗り心地は至ってしなやか。ノーマル・ホイールを履き、最もマイルドなドライブモードを選んだBMW M3より、身体へ伝わる衝撃は小さい。これまでの理解を超えているのだ。

最新のランボルギーニでありながら、同社歴代のミドシップ・モデルで最高速度は1番低い。50年以上前のミウラ P400と対決しても、ウラカン・ステラートが負けるだろう。最高出力では勝っていても。

タイヤも肉厚で、扁平率は40もある。ここまでサイドウォールのあるタイヤをスーパーカーが履いていたのは、フェラーリ360が現役だった頃。最低地上高は171mmあり、都会派のクロスオーバーより高い。

近年の高性能なSUVには、最高出力が600psを超え、250km/h以上で走れる例がある。それでも、ウラカン・ステラートは間違いなく別格。よほど酷い悪路を飛ばさない限り、ふわりと宙へ浮いたように、流暢に先を急げる。

目的地までの移動が舌を巻くほど安楽

一般的にミドシップのスーパーカーは、重いエンジンをボディ中央に収める都合上、サスペンションのスプリングレートを硬くする必要がある。しかしこのクルマの場合、ノーマルのウラカン・エボより約25%柔らかい。ストロークも約30%長い。

この足回りの違いが、新領域を生み出している。ステアリングの反応は極めてスムーズで、狙った通りのラインでボディは孤を描く。

ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・ステラート(英国仕様)

エグゾーストのバルブが閉じ、アクセルペダルのストロークを有効に使えるストラーダ・モードなら、目的地までの移動は舌を巻くほど安楽。約400kmをドライブして実感した。尖ったシルエットのランボルギーニに乗っていることを、忘れてしまう。

中世に作られた狭い橋を渡り、観光客で賑わう古都へ差し掛かると、特別なウラカンを運転しているという事実を再び意識する。カフェで談笑している人も、ウィンドウショッピングしている人も、こちらへ顔を向けてくる。

ランボルギーニに乗っていれば、多くの視線を感じることは珍しくない。だが、近未来を舞台にした映画へ登場するマシンを目の当たりにした時のように、一様に驚いた表情を浮かべている。

オーバーフェンダーが追加された、オレンジ色のボディはドロドロ。塗装の保護フィルムは、部分的に剥がれてしまった。その汚さに、驚いているだけかもしれないが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ランボルギーニ・ウラカン・ステラート 最後を飾る至高の喜びの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事