4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッド 前編

公開 : 2022.10.26 08:25  更新 : 2022.10.26 09:24

英国のセオン・デザイン社が手掛けた、レストモッド911。経験と愛情で完成された1台を、英国編集部が評価しました。

魅力を引き出しながら、しっかりモダナイズ

近年、欧州のクルマ好きの注目を集めているものの1つが、クラシックなポルシェ911レストモッド。独自の思考と強い熱意を持って仕上げられ、トレンドの終わりは見えないようだ。

そのレシピは、往々にして共通している。ワイド化されたフェンダーラインと、磨き込まれたフラット6に、豪奢な書斎のようなインテリア。ベースとなる911は、歴代のモデルでも価値が伸び悩んでいた、空冷エンジンの964型が選ばれることが多い。

セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)
セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)

ポルシェは、その3代目を約3万4000台製造している。現存数は少なくなく、見つけ出した状態の良い例へ丁寧に最新技術を施すことで、羨望を集めるようなスポーツカーとして一新される。

希少性という点では、さほど高いとはいえないかもしれない。希望すれば、予算があれば1台オーダーすることはできる。思わず2度見するほど、高額ではあるが。

オリジナルの動的特性や感触を変えることなく、魅力を引き出しながら、しっかりモダナイズされる例も多い。ややこしいことに、ルックスは964よりクラシカルに仕立てられる場合もある。神秘的とさえ感じる仕上がりのものも。

現代のドライバーにとっても親しみやすく、胸が苦しくなるほど美しい。ポルシェ911の極上のレストモッドには、表現しきれないような誘惑がある。

405psの自然吸気4.0Lフラット6を搭載

今回試乗することができた、セオン・デザイン社のポルシェ911もその1つに加えられる。北米カリフォルニア州を拠点とするシンガー社に対する、英国オックスフォードシャーからの回答といえる。

このセオン・デザイン社は、スタイリングや技術開発を専門とするアダム・ホーリー氏と、経営面を仕切るルシンダ・アージー氏の2人によって、2016年に創業された。まだ若いレストモッド・ガレージだ。

セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)
セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)

これまでにデザイナーとしてBMWロータスのモデル、航空機のエアバスの機内デザインなどに関わってきた経験を持つという。コンピューターを用いた設計、CAD技術にも長け、プロジェクトを意欲的に前進させている。

もちろん、クラシックなポルシェ911に対する思い入れも半端ない。センスは素晴らしいのヒトコトだ。

彼らが近年仕上げたのが、「CHI001」と名付けられたダークパープルの911。南米チリの顧客に向けたクルマで、30年ほど前の964型がベースになっている。同社がチューニングした、最高出力405psの自然吸気4.0L水平対向6気筒エンジンを搭載している。

彼らの小さなワークショップには、製作途中のポルシェが並んでいた。別の作業段階にある3台が。

964のボディシェルは地金が顕にされ、細かい歪みを入念に修正し、強化が施される。ボディパネルは職人が手作業で打ち出すスチール製か、CHI001のようにカーボンファイバー製が選べる。ただしドアパネルは、衝突安全性を理由にスチール製だけらしい。

記事に関わった人々

  • リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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