社会人1年目、ポルシェを買う。

2018.07.17

第67話:Iくん、まさかのポルシェ3台目。しかも空冷。

993に乗ってみた

当然といえば当然だが、
なんの儀式もなくキーをひねるだけで
ほんのわずかなクランキングの直後に
エンジンがかかる。

ジャーっという音は精緻できめ細やか。
蛇口から勢いよく、
そして規則ただしく出る水を思い起こさせた。
排気音、というよりエンジンが回っている音。

ステアリングは調整できないから、
シートをあわせてハンドルを握る。
僕はシートが比較的前にあるのが好きなのだけど
それでも腕は少し伸ばし気味になるかんじがする。
古いポルシェならではの
僕個人としては憧れるポジションだ。
(それくらいにハンドルが「奥の方」にある)

アクセルを踏むと2速からソロソロと進んだ。
驚いたのはアクセルを踏んだときよりも
ブレーキを踏んだ時。踏んだすぐあとに効き、
「ものすごく分厚いもの」を踏んでいる感触。

ハンドルを切った分だけ曲がり、
アクセルを踏んだ分だけ進む。
勝手にやってくれているといった感覚とは無縁。
シフトレバーを右に倒せば
マニュアルモードも楽しめる。
何よりエンジンを上に回すことができるのが魅力。
回すほどゴォっと逞しい音が車内をひたと満たす。

テキパキと切り替わるギアが褒められがちだけど、
これほどなめらかに、
しかも手際よくギアを変えてくれるならば
ティプトロニックも十分にいいなぁと思った。
だってF1マシンに乗っているわけじゃないのだし。
何より、ほかに味わうところが多すぎて、
「シフトの手間が省ける」というメリットもある。

「飛ばさなくても、ぜんっぜん楽しい」
とI君は興奮気味に言った。大賛成だ。

ボディも(996より、よほど)しっかりしている。
乗り心地もいい。こういう楽しみかたもあるのだ。

何より、僕たち20代では想像しがたい、
「空冷ポルシェ」という世界に、
ポンと飛び込んでいったI君に
心から敬意を表したいと思った。

それから996に乗り換えて、
もっと感じたことがある。

 
 

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