クルマを愛する映像作家 米倉強太が語る、アルファ・ロメオ・ジュリアの真価

公開 : 2025.09.08 13:00

新しい旧いではないジュリアの真髄

ひと通りの撮影を終えたあと、ジュリアをじっくりと試乗する米倉さん。彼に本業にまつわる疑問を投げかけてみた。彼自身は映画監督という仕事をどのように捉えているのか? すると彼はしばらく考えてから、「場所を作るとか、世界観を作る人とか、そんな感じですね」と答えてくれた。そしてすぐ、その言葉をクルマと結び付けることも忘れない。

「それって僕が愛車をいじることと似ているかもしれません。例えば、ドライビングポジションとかアシのセッティングなどを自分の好みにしていく地道な作業」

つまり監督はエンジニアやチューナーであり、演者はドライバーということになるのだろう。

もし米倉さんのガレージに新しいジュリアが収まったとしたら、どこに手を入れる?

「その必要はないですね。これだけしっかり走りが楽しめるのに、実用的なリアシートやラゲッジスペースも備わっている。本質的な部分がしっかり整っているクルマは飽きがこないから、新しいとか旧いという基準で判断するものでもない。例えばかつての4ドアのジュリアもまさにそうだったんだと思います。クルマ好きが求めているものが揃っている」

とかく現代車は話題性や機構的な目新しさに注目が集まりがちだが、その捉え方はクルマ好きが求めるものとは必ずしも一致しない。必要要件を満たしつつ、あとはできる限り削ぎ落とす。そのキャラクターを紐解いていくと、21世紀のジュリアは伝統的なアルファ・ロメオのクルマ作りに忠実。未来のクラシックになるのは、実はこんなクルマなのである。

アルファ・ロメオ・ジュリア公式サイトをみる

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_

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