クルマ漬けの毎日から

2025.12.25

スティーブ・クロプリー(英国版編集長)が取材や日常を通して見た2025年を、写真とともに振り返ります。後編では、7月から12月までをお届けします。

クルマを通して見た「2025年」後編【クロプリー編集長コラム】

もくじ

7月 平凡なクルマの祭典
今年もありがとうございました

7月 平凡なクルマの祭典

年月が経つにつれて、夏の恒例イベント「平凡なクルマの祭典(フェスティバル・オブ・ジ・アンエクセプショナル)」で感じる、皮肉なユーモアと率直な誇りが混ざり合う独特の雰囲気がますます好きになっている。

リンカンシャー(イングランド東部の州)のグリムソープ城で、今年もまたこのフェスティバル(コンテスト)が開催された(上の画像)。

「ただのベージュじゃないよ。これはハーベストゴールド」と書かれたボード。古くて安いから乗っているのではなく、このクルマが好きだから、と来場者にアピール。

ある参加者はこのボードをクルマの近くに置き、会場を盛り上げていた。

だが、見逃してはいけないのは、「平凡なクルマの祭典」に参加することは、自分だけの特別な1台を所有し、大切に乗りたいと考えている人々(その多くは若者で、高級車を手に入れるよりも、別のことにお金を優先させたい人たち)にとって、新しい前向きな進むべき道になっていること。

普通のクルマにまつわる素晴らしい話をしたり、聞いたりして気分を高めたいならば、「平凡なクルマの祭典」に参加してみるといいだろう。

◆8月 ヴィンテージカーの聖地
8月の太陽が輝き、戦前の古いクルマが集まる時、イングランドのチェルテナム近郊にあるプレスコットほど、ふさわしい場所は他にない。

この美しいプレスコットは、1937年からブガッティ・オーナーズクラブが所有しており、また非常に高度な技術を必要とするヒルクライムコースも備わっている。

そのため、長年使い込まれてきたプレスコットは古き良き時代が感じられ、ヴィンテージカーが非常によく調和する。ここではもっと速くて新しいクルマ向けのイベントも開催されるが、この8月のイベントはヴィンテージ・スポーツカークラブにより運営され、じつに素晴らしかった。

ブガッティ・オーナーズクラブも、ヴィンテージ・スポーツカークラブも、非常に歓迎ムード。最近ヴィンテージカーは、比較的手頃な価格で買えることがある。またある種の人たちにとって、ヴィンテージカーは機械としても非常に魅力的なのだ。

◆9月 著名な自動車著述家 ルドヴィクセン氏
世界的に著名な作家であり、自動車ライターでもあるカール・ルドヴィクセン氏を訪ね、彼のサフォーク(イングランド南部)の家でインタビューできたのは、大変光栄な出来事だった。

彼はちょうど、3巻にわたる大作で受賞もしている “Power Unleashed”(解き放たれたパワー)という、スーパーチャージャーとターボチャージャーの歴史の本を出版したばかりだった。

70年余りにわたる輝かしい経歴のなかで、彼は著述のみならず、実践した人でもある。

ルドヴィクセンはGMのエンジニア兼デザイナーとしてキャリアをスタート。のちに欧州フォードへ移り、モータースポーツ部門の責任者となり、エスコートRS1800をはじめとする多くの名車を世に送り出した。

◆10月 ビスター・ヘリテージ
古いランドローバーにはだれもが抗し難い魅力がある。 私も妻もその魅力には逆らえない。

ビスター・ヘリテージで年に数回開催される「スクランブル」というイベントの今年の最終回に参加し、1956年式のランドローバー(歴代オーナー2人)を眺めて、私たちは長い時間を過ごした。なぜ我が家にはもっと広いガレージがないのだろうかと思いながら。

ドライブに向いた素晴らしい季節は、毎年あっという間に終わってしまう。

今年の前半、ここビスターは大火災に見舞われたが、その悲劇を乗り越え、再び立ち上がっているのを見て嬉しく思った。また、業界の将来を担うと期待されているハイテク企業向けの一角「イノベーション・クォーター」も、成長を始めている。

◆11月 大規模イベントの楽しみ方
バーミンガムのナショナル・エキシビション・センター(NEC)で開催されるクラシック・モーターショーへ行くすべての人にアドバイスしたい。

それは、金曜日にスタートし、土日にかけてじっくり見るのがよいということ。私は友人と1日だけ出かけたが、午後4時までにはクルマを見すぎて、感動や判断力がすっかり麻痺してしまった。

今年私が参加したクルマ関連のイベントと同様、訪れた人は展示の規模と豊富さに驚き、また巨大な会場の屋根の下には、知恵が蓄積されていることにも驚くだろう。

こういうイベントで、どのように展示を見るのか? 私の対処法は、家まで運転して帰りたいと思える最高の1台を選ぶこと。

それが、この1970年式のフォードのワゴン「カントリースクワイア」。巨大なV8を備え、サイド全体にウッド調の金属パネルが張られていて、威厳を感じた。

◆12月 プジョー205 GTi 買いました!
毎年1年の終わりを、今年のように嬉しい気分で締めくくれたらよいのにと思う。ここ最近、手頃な価格の登録車両で、息子たちと一緒にヒルクライムやサーキットを楽しめる、すでにある程度チューニングされた個体を探していた。

そしてたまたまこのプジョー205 GTiを見つけ、コーンウォールにある「ラリー・プレップ&クラシック」の創設者でエンジニア、また賢い友人でもあるニール・イェーツのアドバイスもあり、このクルマを購入した。

長年使われていなかったので、再整備が必要だが、状態は良く、ノイジーで速い。きっと私たちは、この205 GTiを大いに楽しめると思う。今年は、非常にたくさんのクリスマスがまとまってやって来たように感じている。皆さんも同じような12月であることを願う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    小島薫

    Kaoru Kojima

    ドイツ自動車メーカーの日本法人に在籍し、オーナーズマニュアルの制作を担当。その後フリーランスで翻訳をはじめる。クルマはハッチバックを10台以上乗り継ぎ、現在はクーペを楽しんでいる。趣味はピアノ。
 
 

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