【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#25 ベタベタ病はネチャネチャ病!

公開 : 2025.12.19 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第25回は『ベタベタ病はネチャネチャ病!』を語ります。

内装のベタベタ専用除去剤!

大貴族号(筆者が所有する先代マセラティクアトロポルテ)の塗装のハゲについては、エンジンフードを再塗装することを決意。タコちゃん(マイクロ・デポ岡本和久代表)に相談の上、神業を持つと言われる業者さんにお願いすることになり、費用20万円弱で解決した。

今後他の場所がハゲてくる可能性はあるが、その時はその時だ。これは自動車ラスト・ロマン。一種の冒険なのだから、『もう20年間は大丈夫!』的な解決を図ってしまったら負けである。これでよし。

今回のテーマは内装のベタベタを除去すること。
今回のテーマは内装のベタベタを除去すること。    清水草一

続いて手を打つべき課題は、内装のベタベタだ。これについては、「イタフラ車の内装ベタベタ専用の除去剤が存在する」と、タコちゃんから聞いていた。

検索したところ、それは『Nリムーバー』なる製品で、価格もリーズナブル(1本約2000円)だったので、早速購入した。

商品の説明によると、Nは『ネチャネチャ』の頭文字だという。私はずっと『ベタベタ』と呼んでいたが、ネチャネチャが一般的だったのか? どっちでもいいけど。

製品の通販サイトには、フィアット・ムルティプラやアルファ・ロメオ147の写真が使われていて、目頭が熱くなった。「こんなマイナーな病気のために、こんなの作ってくれてありがとう!」と、思わず手を合わせたくなった。

イタリア車は人間味豊か!

製品は早速届いた。しかしあまりの猛暑で、とても作業に取り掛かる気になれず、秋まで放置。涼しくなった頃を見計らって、安ド(弊社スタッフ)とのんびり取り掛かった。

私が一番気になっていたのは、運転席ドア内側のベタベタだ。これは、後から上塗りされたらしき安っぽい塗装の劣化によるもので、マセラティ様の罪ではないが、ベタベタには変わりはない。

今回購入した『Nリムーバー』。価格も1本約2000円とリーズナブル。
今回購入した『Nリムーバー』。価格も1本約2000円とリーズナブル。    清水草一

問題の場所に触ってみると、なんと! 涼しくなったせいで、夏よりベタベタ感が大幅に減じている。暑いとベタベタ、寒いとカサカサ気味になるなんて、さすがイタリア車は人間味豊かである。

若干拍子抜けしつつ作業開始。脱脂綿にNリムーバーを含ませて塗り、10秒放置して拭き取ると、落ちる落ちる! あっという間に脱脂綿は真っ赤になった。

オレ「安ドよ、取れるな!」

安ド「殿、取れますね!」

われわれはニッコリほほ笑みあった。

それから約2時間。同じところをシコシコと何度も拭き取ったことで、元のテカテカベタベタ感はかなり減少。そこそこ満足できる仕上がりになった。

まるであしゅら男爵だな!

続いてネチャネチャ病本来の「樹脂塗装が加水分解してネチャネチャしたところ」を順次作業。両名とも、カニを食べてる時みたいに無言で没頭した。

安ド「殿! 見てください、これ!」

「おおっ! まるであしゅら男爵だな!」
「おおっ! まるであしゅら男爵だな!」    清水草一

何事かと近寄ると、大貴族号のネチャネチャの本丸、リアアームレスト内部の右半分だけが、見事にキレイになっていた。

オレ「おおっ! まるであしゅら男爵だな!」

あしゅら男爵とは、『マジンガーZ』に登場する、顔が左右で違う人物のことである。古くてスマン。

大貴族号のネチャネチャ病は大幅に軽くなった。もう触ってベタ付く部分はあんまりないヨ! というくらいまで。難病が2000円っぽっちで解決するなんてスゴイ!

途中、フロントシート下部のベタベタを除去していたら、見慣れないスイッチを発見した。

なんだこれ?

なんと! シートのベンチレーションシステムじゃないか! 隣はシートヒーター、その隣はシートのマッサージシステム! ついでにシートの自動調整システム(膨張式のバッグによってシートが自然に体のラインに合わせて調整される装置)も! 

こんなゴージャスな装備が付いてたのか! さすが大貴族。

ベンチレーションシステムをオンにしてみたら、確かにシート表面の穴から風が出てきた。マッサージシステムもちゃんと動く。こんなすぐ壊れちゃいそうな装置が健在だなんて信じられん! うお~ん、どっちも男鹿半島遠征で使いたかった。無念。

(つづく/隔週金曜日掲載、次回は1月9日金曜日公開予定)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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