最も脂の乗った1960年代の佇まいを見事に再現!コーギーの復刻ミニカー【長尾循の古今東西モデルカーよもやま話:第14回】

公開 : 2025.12.24 12:05

元モデル・カーズおよびカー・マガジン編集長である長尾循による、古今東西モデルカーに関する月イチのコラムです。第14回は1960年代の佇まいを見事に再現した、コーギーの復刻ミニカーを紹介します。

実車で言えばジャガーC/DタイプやDB4GTザガート

かつて一世を風靡した自社の過去製品を復刻するという話は、様々な業界で耳にします。実車の世界で言えば、ジャガーC/Dタイプやアストン マーティンDB4GTザガートなどの、コンティニュエーションモデルがそれに当たるかもしれません。

今回ご紹介する『コーギー』のミニカー群も、まさにそのような存在。1960年代当時、玩具売り場のショーケースの中でキラキラ輝くミニカーを時間の経つのも忘れて見入っていた経験をお持ちの方なら、たいへん気になるであろう復刻モデルの話題です。

今回ご紹介する『コーギー』のミニカー群。
今回ご紹介する『コーギー』のミニカー群。    長尾循

マッチボックス、コーギー、ディンキー、スポットオン、ポリトーイ、マーキュリー、メーべトーイ、テクノ、メルクリンetc.……。1960年代に少年時代を過ごしたクルマ好きの少年、少女にとって、海外ブランドのミニカーは大いなる憧れの的でした。

かくいう筆者もその世代なのですが、個人的にはそれら舶来ミニカーの中でも、特に印象深かったのがコーギーのミニカーです。コーギーとは英国の玩具メーカー、『メットーイ』(METTOY)傘下のコーギー・トイズ社が1956年から展開したミニカーブランド。同郷のライバル、ディンキーやスポットオンなどと切磋琢磨しつつ、1960年代のミニカー界を牽引したビッグネームでした。

コーギーに感じた特徴は『アイデアの宝庫』

当時、子ども心にもコーギーのミニカーに感じていた特徴は、アイデアの宝庫というもの。1950年代ごろのミニカーといえばまだまだ素朴な作り。室内の再現はおろか窓ガラスもないのが当たり前でしたが、コーギーはまず透明の窓ガラスを採用します。

その後もひたすらリアリティの追求に邁進。やがてインテリアが再現され、ボンネットやドアが開閉可能となり、シートがリクライニングし、さらには前輪がステアしてタイヤ&ホイールの交換作業まで楽しめる。

こちらはいろいろな劇中車たち。
こちらはいろいろな劇中車たち。    長尾循

あるいはフィギュアや小道具が用意され、背景が描かれたパッケージと合わせてちょっとした情景が楽しめるものなど、次々に新たな趣向を打ち出してくるコーギーは、自分にとってはまさに最強のミニカーブランドだったのです。

また、コーギーはミニカーの題材選びにも独自のセンスを発揮しました。映画『007シリーズ』のボンドカーとして知られるアストン マーティンDB5は車載の機関銃、リアの防弾版、助手席の射出シートなどの可動ギミックまで再現。映画のヒットと連動し、一説には、世界で最も売れたミニカーと言われるほどの売り上げを記録しました。

こちらのラインでは他にも映画『チキチキバンバン』の空飛ぶクルマ、TVドラマ『バットマン』のバットモービルや『グリーン・ホーネット』のブラックビューティ、『おもちゃの国のノディ』(BBC製作の人形アニメ)のタクシー、さらにはあのビートルズの『イエローサブマリン』(!)までミニカーとしてリリースして、まぁ、その柔軟な企画力には今更ながら脱帽です。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    長尾循

    Jun Nagao

    1962年生まれ。企画室ネコ時代を知る最後の世代としてモデル・カーズとカー・マガジンの編集に携わったのち定年退職。子供の頃からの夢「クルマと模型で遊んで暮らす人生」を目指し(既に実践中か?)今なおフリーランスとして仕事に追われる日々。1985年に買ったスーパーセブンにいまだに乗り続けている進歩のない人。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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