「最高のリメイク」は何代目か フォード・マスタング・ブリット 4世代を比較(2)

公開 : 2023.12.24 17:46

1960年代、派手なカーチェイスで鮮烈な記憶を残した映画「ブリット」 そのイメージを継承した3世代のマスタング 英国編集部が初代とともに比較

1968年式の初代と印象が近い走り

4代目マスタングのブリッド仕様のため、フォードはアルミニウム製のインテーク・マニフォールドと、V型8気筒エンジンらしい轟音を奏でるエグゾースト・システムを開発。映画「ブリッド」のファンの期待へ応えた。

ブレーキは、フロントにブレンボ社製を採用。サスペンションは引き締められ、車高も僅かに落とされた。

フォード・マスタング・ブリット(4代目/2001〜2002年/欧州仕様)
フォード・マスタング・ブリット(4代目/2001〜2002年/欧州仕様)

実際にステアリングホイールを握ってみると、チューニングを受けていても、走りはクラシカル。プラスティックの多いインテリアと相まって、1968年式の初代と印象は近い。シャシーには落ち着きが足りず、英国のテストコースが狭く感じられる。

サスペンション・スプリングは柔らかく、ボディロールが大きい。シフトレバーのストロークは長く、ゲートは少しオフセットしている。エンジンの振動が、車内へ伝わってくる。ステアリングホイールとクラッチペダルは重い。

活発に運転するには、気持ちを引き締め肉体を動かすことになる。それでも、エンジンのフィーリングが苦労へ報いる。アクセルレスポンスは極めて鋭く、1505kgと重くない4代目マスタングのボディを軽々と加速させる。サウンドも心地いい。

年式としては5代目に近いものの、生々しいシャシーと賑やかなエンジンが、明確な前世代感を生んでいる。1978年のフォード・フェアモントから採用の始まった、フォックス・プラットフォームをベースとするためだろう。

ブリッド仕様の理想的な素地

対して2008年に登場したマスタング・ブリッドは、明らかにモダン。見た目はレトロチックでも、フォードは、2005年にリリースした5代目マスタングの開発へ全力を尽くしていた。

ファストバックのシルエットとワイドなフロントグリル、テールライトなどは、1968年式のデザインが借用されている。温故知新で、ハンサムな新世代が生み出されていた。

フォード・マスタング・ブリット(5代目/2007〜2008年/欧州仕様)
フォード・マスタング・ブリット(5代目/2007〜2008年/欧州仕様)

ブリッド仕様を作るうえでも、理想的な素地が完成していた。映画公開から40周年という節目も重なった。

フォードが取ったレシピは、4代目マスタングとほぼ同じ。ハイランド・グリーンの塗装と、トルクスラストD風アルミホイールを採用。サスペンションは強化され、給排気系のチューニングによって、僅かにパワーアップも果たしていた。

フロントグリルはメッシュへ交換。クロームメッキのポニー・エンブレムは外された。

インテリアには、大幅に手が加えられた。ブラックのプラスティックで溢れていた内装は、アルミ製トリムでドレスアップ。エアコンの送風口やメーターリング、シフトノブなどが太陽光を反射し、特別な雰囲気を生み出していた。

シートはマスタング・シェルビー GT500に設定されていたスポーツタイプを、ブラック・レザーで仕立てたもの。サポート性が高く、座り心地は良い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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