ポルシェ911 GT3ツーリングと過ごした4週間(1) UK編集部が新車の仕様をセレクト 目指したのはフェリー理想の姿 PDKかMTで悩む

公開 : 2026.10.14 18:05

AUTOCARが仕立てた、ポルシェ911 GT3ツーリング。目指すはフェリー・ポルシェ氏が理想としたであろう姿です。際立つ軽さに、駆動系へ生命感を与える6速MT。4週間に渡る日々を振り返ります。

PDKにするかMTにするかで卒論が書ける

ポルシェ911はシンプルなクルマだ、といわれることがある。しかし、2025年末の筆者は、眠れない一夜を過ごした。992.2型の911 GT3を、PDKにするかMTにするかで悩んだから。このテーマだけで、卒論が書けるかもしれない。

ヘッドレストパッドを外せる、新しいバケットシートにするかも難しい選択。サポート性は間違いないはずでも、少し肉付きが良くなった筆者の場合、幅が窮屈に思える可能性はあった。ほかにも、消化器は? カーボンセラミック・ブレーキは?

ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2型/英国仕様)

思い切って、何も付けない素のGT3が良いかも、とも考えた。しかし、ポルシェはそんな注文を受け付けないだろう。魅力的なアイテムを、沢山用意しているのだから。

フェリー・ポルシェ氏が理想としたような911

英国法人のポルシェGBが準備する、広報用911 GT3の仕様を決めて欲しいと、AUTOCARへメールが届いたのは昨年の冬だった。願ってもない依頼に、胸が踊った。

ただし、猶予は18時間。興味本位でコンフィギュレーターへ向かうだけなら充分な時間でも、高額を投じ現実に1台を仕上げるのだから、話は違う。筆者より遥かに永く、この世に存在し続ける可能性はある。1か月お借りできる条件はうれしいが、重要な任務だ。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2型/英国仕様)

幸いにも、われわれは911の理想的な仕様をいつも仮想している。ポルシェGBは公道向きのツーリングを希望しており、より気兼ねなく乗れ、実用的でオールドスクールな1台が良いだろうと直感した。フェリー・ポルシェ氏が、理想としたような911が。

敏腕技術者、アンドレアス・プレウニンガー氏率いるチームが延命させる、4.0L水平対向6気筒エンジンと崇高な操縦性は、特別なボーナス。後輪駆動で自然吸気の911だという、本質的な魅力を引き出したい。

公道仕様のポルシェ917へのオマージュ

果たして塗装は、149種もの特別色は選ばず、2003年のカレラGTに向けて調色されたGTシルバーを指定。911の流麗なフォルムを、一層際立たせるはず。内装は、妖艶なコイーバ・レザー。ロッシ伯爵が希望した、公道仕様の917へのオマージュだ。

ホイールは、あえてシンプルに。カーボンセラミック・ディスクは、バネ下重量を削る目的で外せない。リアシートは、GT3の場合はツーリングでなければ選べない。リアアクスルからのノイズを遮断し、倒すと荷物置き場として重宝する。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2型/英国仕様)

それから半年以上、ロンドンから西に離れたレディングのポルシェGBで、911 GT3ツーリングとご対面。パガーニ級の潤沢な予算を用意しても、ここまでクラシカルな魅力に溢れたキャビンと、屈指の走行性能を両立させたクルマの創出は、簡単ではないはず。

6速MTは大正解のチョイスだった。サンバイザーまでレザー張りだが、シートへ座ると納得。総額は、20万ポンド(約4160万円)を僅かに切っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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