日本車らしいアナログな体験 スズキ・スイフト x オペル・コルサ x セアト・イビサ(2) 色濃く残す楽観的な1990年代の喜び

公開 : 2026.10.23 18:10

英国でも選択肢が減った、お手頃なMT車。しかしスズキ・スイフトとオペル・コルサ、セアト・イビサなど、小さなハッチバックなら、まだ複数を検討できます。UK編集部が3台の魅力を探りました。

カーブを曲がり始めた瞬間に印象は一転

MTを選べる、小型ハッチバック比較。カメラマンのジャック・ハリソンが、最も心のこもった眼差しを向けるのが、スズキ・スイフトだ。

水平のキャラクターラインが強調された、スタイリングは大胆。ドアを閉めると、軽い金属音が響く。開放的な車内は、デザイン的には少々大味で、タッチモニターはダッシュボードへ後付けされたよう。でも、不思議と好ましい個性に満ちている。

スズキ・スイフト/ヴォグゾール(オペル)・コルサ/セアト・イビサ
スズキ・スイフト/ヴォグゾール(オペル)・コルサ/セアト・イビサ    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

座面の位置は3台では1番高く、背もたれは起き気味。スポーティな姿勢とはいいにくい。ところがカーブを曲がり始めた瞬間、印象は一転する。身のこなしはセアト・イビザより軽快で、操縦性はヴォグゾール(オペル)・コルサより正確だ。

メーターパネルには、8000rpmまで振られたアナログのタコメーターと、スピードメーター。赤い針で見やすく、エンジンと対話するような喜びがある。運転支援システムとスタビリティ・コントロールをオフにするスイッチも、押しやすい。

アナログ体験を重視した姿勢が日本車らしい

5速MTのシフトレバーは、握りやすいカタチ。ゲートの感触はゴムが噛んだように若干曖昧ながら、ストロークが短く変速は小気味良い。馬力は2台へ劣るが、軽いボディにマイルド・ハイブリッドのアシストで、ターボレスでも動力性能に不足はない。

坂道では、積極的にギアを選ぶ必要はあるものの、小さなエンジンをしっかり使い切れるのが最高に面白い。高負荷時には、3気筒特有のビートで聴覚的にも楽しめる。

スズキ・スイフト 1.2 ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)
スズキ・スイフト 1.2 ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ブレーキの効きは強くなく、ペダルの感触が繊細というわけではない。しかし、純粋な運転する喜びが勝り、細かいことを忘れさせる。そもそも余程きついカーブでも、大きな減速なしで果敢に飛び込め、颯爽と旋回していける。

82馬力でも、ステアリングホイールの下端はフラット。気軽なハッチバックでも、走りを楽しもうという姿の表れだろう。背伸びして高級感を求めず、アナログな体験を重視した姿勢は、マツダMX-5(ロードスター)やトヨタGR86にも通じ、日本車らしい。

楽観的だった1990年代の喜びを色濃く残す

「内側のリアタイヤが浮きそうだった!」と、ハリソンが笑顔で話す。2台と異なり、他ブランドとプラットフォームを共有しないことが、個性の醸成へ効いているはず。

アダプティブ・クルーズコントロールの制御も、燃費も、スイフトは驚くほど優秀。後席は大人でも余裕でくつろげる広さがあり、信頼性にも優れるはず。クルマとしての基本性能が、しっかり高い。想像以上の万能選手といえる。

スズキ・スイフト 1.2 ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)
スズキ・スイフト 1.2 ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

少し華はないかもしれないが、最も速く、熟成度が高いのはコルサ。多くの人の毎日へ、自然に馴染むだろう。セアトの今後が気になるところだが、イビザも魅力的。スタイリングや操縦性、キャビンの落ち着いた雰囲気が好ましい。

だがスイフトは、楽観的だった1990年代の喜びを1番色濃く残す。コスパに優れ、ドライブが面白い。今もMTを選べる今回の3台で、最も欲しいと思わせる。仮にフォードがフィエスタの生産を続けていたら、このクラスの王者であり続けたはずだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

スズキ・スイフト x オペル・コルサ x セアト・イビサの前後関係

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