BMW 530d Mスポーツ

公開 : 2012.01.04 09:22  更新 : 2017.05.29 18:01

どんなクルマ?

BMWの販売面においての大失敗といわざるをえないのが5シリーズGTだ。この贅沢なクロスオーバーは、世界各国で売上目標に達していないばかりか、北米市場ではユーザーがBMWブランドから離れていく原因にまでなってしまった。また、イギリスにおいても、5シリーズGTに満足しているユーザーを探すのは、待遇に満足している公務員を探すよりも難しい代物となってしまったようだ。

そこでBMW英国では、この車高の高く重い4座モデルに、Mスポーツのスペックを与えて、起死回生を図った。ニューエディションでは、エアロダイナミックはボディキット、Mスポーツ・サスペンション・セッティングが与えられ、装備やトリムもMスポーツスペックのものとなった。更には、5GTの高い車高のおかげで小さく見えるものの、19インチのアロイホイールも与えられている。

どんな感じ?

5GTのドライビングポジションは、万人を説得させるに充分なものだ。4シーターとしては、非常に洗練されて、且つ贅沢な作りで、リクライニング式のリアシートはフルサイズのリムジンにも匹敵するレッグスペースを確保している。ヘッドクリアランスも同様にたっぷり確保されている。より高くなったシート高ではあるが、思ったよりもスムーズに乗降ができ、視認性にも何ら問題はない。

5GTの特徴でもあるハッチバックは、、完全に開けばカーゴスペースへのアクセスは容易だ。とはいっても、限られた駐車スペースなどでは「半開き」を多用することになろう。残念なのは、そのスペースで、いわば標準的なサイズ、中型サルーン並みでしかないことだ。

しかしながら、Mスポーツのシャシーはプレミアムプライスを支払うだけの価値が充分にある。素晴らしいダンピング性能とロールコントロールを、静かさとしなやかな乗り心地を損なうことなく5GTのステアリングにもたらしている。

ドライビング・パフォーマンスコントロールを「スポーツ」にセットすれば、田舎のワインディングロードを落ち着いて走ることのできるクルマである。特にドライブしたいと思わせるものではないが、パワフルで効率的で洗練された6気筒ディーゼルのパワートレインを装備した十部ンなパフォーマンスを持ったクルマだ。

私が試乗した530dは、スタンダードモデルよりも高いグリップレベルとダイナミックなレスポンスを持っていた。というのも、オプションで装備される「アダプティブ・ドライブ・パッケージ」を装着していたからだ。もし、これがなければ、パッシブダンパーと従来のアンチロールバーの組み合わせのままであり、ダイナミックさという点においては大きく劣ってしまったことだろう。しかし、BMWはこの5GTに対するスペシャルアップグレードを無料で行っているのだ。それには、アダプティブ・ドライブ・パッケージはもちろん、ヘッドアップディスプレイやナッパレザー、キセノンHレッドライト、ソフトクローズドアなどが含まれている。

この無料のアップグレードが続く限りにおいては、このクルマのアラを探すのは難しい。コンフォートモードではストレッチリムジンのそれに勝るとも劣らない優しい乗り心地を与えてくれる。特に、低速時でのパンプコントロールは秀逸ですらある。スピードにのった場合には、ダンピングをより強いモードに切り替えれば良い。残念なのは、いかなるモードでも全ての状況に応じたセッティングを見つけてくれるようなーー例えばジャガーXJやレンジローバー・スポーツーー仕組みではないことだ。

「買い」か?

無料アップグレードを装備すれば、ラグジュアリーなリアシート・スペースとハッチバックがもたらす実用性を考えれば、5GTは大いにいい買い物となろう。発表から3年近くたったことで、クルマとしても成熟度を増している。わずかな割増料金で5シリーズのサルーンを望んでいる人(それも何らかの理由で5シリーズ・ツーリングが好きでない人)には、今がまさに買い時といえるだろう。

しかし、現実問題とすれば、そのような人は5GTのターゲットとはならないだろう。トレードダウンを受け入れる7シリーズのユーザーや、ステップアップということを考えない5シリーズのユーザーがメインの顧客となるのだろう。

(マット・ソーンダース)

BMW 530d GTスポーツ

価格 48,800ポンド(5,856,000円)
最高速度 238km/h
0-100km/h加速 6.9秒
燃費 18.5km/l
Co2排出量 173g/km
乾燥重量 2035kg
エンジン 6気筒2993ccターボディーゼル
最高出力 242bhp/4000rpm
最大トルク 55.0kg-m/1750-3000rpm
ギアボックス 8速オートマチック

おすすめ記事

 
最新試乗記