DB11の背景と、これからのアストンの展開を訊く

2016.09.01

アストン マーティンDB11の日本初お披露目に際し、アストン マーティン社のアジア・パシフィック・プレジデントのパトリック・ニルソン氏が来日し、インタビューする機会に恵まれた。そこでDB11誕生の背景と、同社の現況とこれからの展開を訊いてみた。あわせてアストン マーティン・ジャパンでマネージング・ディレクターを務める寺嶋 正一氏に補足していただいた。

Q DB9からDB11へ継承したスピリッツ、コンセプトで大きく変わった部分はありますか?

パトリック・ニルソン(以下PN) DB9から受け継いだスピリッツは基本的に変わっていません。長らく愛されてきたDB9のフィロソフィはそのままに、DB11はGTカーとしての快適性はすべてを高めたことです。DB11はとても美しいクルマと認識しています。皆さんの印象はいかがですか?

Q ここに来て開発時間が短縮されているように感じますが?

PN GT12ではアイディアから導入までの開発は18ヶ月で行いました。会社が小さいので2000人しか働いていませんし、2分も歩けばCEOを始めとする他の部署のスタッフが見付かるスピーディさも助けになっています。また、親会社がないので介入が無く、設計やサプライヤーの選択も自由に動けることが開発を短縮する大きな要因と言えます。
将来的には技術者を増やす予定ですが、DB11の開発では250の新たな仕事が出ましたので増員しています。アンディ・パーマーのスピーディな決断が寄与しています。

Q ダイムラーとのジョイントはどのような内容ですか?

PN アストン マーティンはどこにも属さないフリーなポジションにありますので、独自性を保っており、ダイムラーとは良いパートナーシップを続けています。まず電装系で素晴らしいテクノロジーを得ることができ、このDB11では数多くのものが採用されています。TFTディスプレイを始め、ナビゲーションなどのインフォテイメント・システムで大きく進化することができました。
先日CEOのアンディ・パーマーがリークしてしまいましたが、次期V8エンジンもダイムラーと共同開発しています。ダイムラーとの技術提携に関して誤解の無いように説明しますと、完成エンジンを供給してもらうのではなく、一から開発に協力してもらっていることです。

Q DB11の生産能力は

PN アストン マーティンは全体で年間7000台を超えない生産を目指しています。その中で個々のモデルの比率は、フレキシブルに考えています。計画に入っているザガートやラゴンダなどの限定生産されるスペシャル・モデルは例外となります。

Q アストン マーティンが日本人の心に近いものがあると聞きましたが

PN アストン マーティンのCEO、アンディ・パーマーが日本の文化に感動したことに始まります。マテリアル、クラフトマンシップ、プレパレーション、ひとりひとりのお客様の要望に応えていくテーラーが、ブランドの神話を創って行くと考えています。
付け加えると、日本の美はシンプルで簡素な美しさにあります。控えめや、仰々しくなく見せびらかすことをしないことを意味する「アンダーステイトメント」という言葉がイギリスのブランドで使われていますが、そのエレガントな部分が日本の文化にあると思います。アンディ・パーマーは13年以上日本にいて、その時の思い入れが根底にあるはずです。

寺嶋 CEOのアンディ・パーマーは13年間日本で過ごしていて、日本のことをとてもよく知っています。私は長らくアストン マーティンに関わってきましたが、彼の就任後は劇的な変化を遂げているのです。社内では「ものづくり」「改善」「おもてなし」等の言葉が日本語のまま普通に使われているほどです。
アンディは日本で学んだことをアストン マーティンに取り入れてブランド性を高めています。その一例として、DB11の最初に生産する1000台のすべての完成車を彼が最終チェックを行って、品質管理の必要性を身をもって示そうという意思表示をしています。


Q アンダーステイトメントに関する考え方を教えて下さい。

PN 私の解釈としては、テーラーメイドで創ったスーツを皆さんは見せびらかすことはしないでしょう。ジェントルマンがDB11に乗った時も、アストン マーティンの卓越性やクオリティを感じても、わざと見せびらかすことはしないと思います。これがアンダーステイトメントといえます。
アストン マーティンのデザインを例に挙げると、DB11ではリヤウイングを格納式にするなど、スタイリング・ラインが崩れることを嫌って細かな部分まで気を配って控えめな美しさを表現しています。どちらかというとバランスというより、ハーモニーといったほうがしっくり来るかと思います。

寺嶋 アストン マーティンはバランスを追い求めた結果がアンダーステイトメントといえます。デザインも単に尖ったものにはせず、バランスの良い滑らかなラインを重視しています。スタイリングもそうですし、ただ単にパワーを追求するのではなく、シャシーとのバランスが理想的かを考えて造られています。
使い方でもサーキットで楽しめるパフォーマンスを備えながらパーティにも行けるし、家族で旅行にも行けるすべての面でバランスを重視した点が特徴です。すべての面でバランスに拘った考え方がアンダーステイトメントといえます。バランスの部分は伝わり難いので、これからはメディアを含めてより一層伝えてゆきたいと思います。

Q オーナー・サポートのプログラムはありますか

寺嶋 おもてなしのひとつとしてサービス・クリニックと呼ばれるイギリスからエンジニアを招き、オーナーと共に所有する車両をチェックし、完璧なコンディションに導くプログラムがあります。世界各国を巡って行われているもので、2年に1回開催しています。その時は新旧のモデルを分け隔てなく対象としています。

Q 現在の経営内容はいかがですか

PN アストン マーティンの2ndセンチュリー・プランの裏付けは100%とれており、ファイナンシャル的にとても安定した状態にあります。

Q 今後ヴォランテや派生モデルを送り出す予定はありますか?

PN アストン マーティン2ndセンチュリー・プランで毎年ひとつのニューモデルを送り出す予定になっています。これからもアストン マーティンを注視して下さい。

ありがとうございました。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新国内ニュース

アストン マーティンの人気画像