フェラーリとマセラティを凌駕? アストン マーティンDB12 ローマ グラントゥーリズモ 3台比較試乗(2)

公開 : 2024.02.03 09:46

新しいDB12とグラントゥーリズモは、クラス王者のローマを超えたのか 2024年のGTクーペ代表とは? 純粋な内燃エンジンを積む3台を、英国編集部が比較試乗

純粋な内燃エンジンを称賛したい

いよいよ出発。それぞれ最新のグランドツーリング・クーペだが、電動化技術は載っていない。マセラティ・グラントゥーリズモには、バッテリーEVのフォルゴーレが加わる予定ながら、2024年後半まで待つ必要がある。

だとしても、純粋な内燃エンジンを称賛せずにはいられない。数分で満ちるガソリンタンクを積み、ノンストップで600km以上を余裕で走れる能力も、依然として強みだ。

ホワイトのフェラーリ・ローマと、ダークグリーンのアストン マーティンDB12
ホワイトのフェラーリ・ローマと、ダークグリーンのアストン マーティンDB12

ダイナミックな容姿通り、安楽に速い。グラントゥーリズモのフルスロットル時は、フェラーリ・ローマやアストン マーティンDB12より穏やかかもしれない。それでも、狭く危険な区間も入り混じった一般道では、結局は手に余るほど速い。

ターボチャージャーで加給されるV型6気筒ネットゥーノ・ユニットは、素晴らしいレスポンスで回る。低回転域での排気音から荒々しく、スポーティな印象を強める。パワーデリバリーは終始スムーズ。滑りやすい路面に対する順応性も高い。

ローマのV8ツインターボは、容赦ないほどシャープ。良くも悪くも、常に気持ちが駆り立てられる。乾燥し温かい環境なら、驚異的な操縦性を披露することを体験している。軽快で滑沢で、ドライバーを喜ばせる態勢が常に控えている。

しかし、今日の条件では4000rpm以上まで回すことは難しいようだ。フェラーリの広報担当社は、スタッドレスタイヤを履かせることも可能だと申し出てくれたが、他の2台と条件を合わせるためお断りしていた。

ローマのV8エンジンに圧倒される

路面には凹凸が多く、直線区間は長くても200m。リアタイヤはパワーを受け止めきれず、しばしばスピンする。隆起部分を通過すると、テールが左右へ暴れようとする。筆者の判断は間違いだったらしい。

ドライブモードをウェットにすると、落ち着きが増す。だが、フェラーリが目指すグランドツアラーとして、正解なのかという疑問は残る。より幅広い条件で、有能ぶりを展開できてもいいだろう。

マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様)

マラネロが仕上げたV8エンジンには、圧倒される。中回転域ではリニアにトルクが繰り出され、7000rpmを超えても鋭く上昇しようとする。DB12の怒号とは異なる、切なくなるようなV8らしいサウンドを響かせる。そして、凄まじくパワフルだ。

ローマは間違いなく速い。反面、グランドツアラーとして、その能力を現実的にどれだけ堪能できるのかという尺度も重要といえる。本来の素晴らしさを、もっと味わいたいと思ってしまう。

グラントゥーリズモも、実際には平滑なアスファルトとの親和性が高い。路面の乱れに対し、アダプティブ・エアサスペンションが減衰力を瞬時に調整するものの、望ましい姿勢制御や大径なタイヤの接地性を保つのに、多少手を焼いている。

ステアリングホイールの感触は軽めで、僅かにダイレクト感が弱い。狙い通りのラインを辿ることが、簡単とまではいえない。ローマを凌駕する、運転体験ではないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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