BMW、レンジエクステンダー車に再注目 消極姿勢から一転 次期型X5で採用へ

公開 : 2025.06.11 06:45

BMWは、エンジンを発電機として使用するレンジエクステンダー(REx)技術を再び市販車へ導入する可能性があります。中国をはじめとするグローバル市場の需要に対応したもので、実現すれば『i3』以来となります。

2026年に市販導入を検討中

BMWは、充電インフラの制約を受けない電動車として、レンジエクステンダー(REx)ドライブトレインの再導入を計画中だ。6代目となる次期型X5での採用が見込まれている。

開発は部品サプライヤーのZF社と共同で進められている。BMWの関係者によると、中国市場を中心にRExモデルの世界販売が力強く伸びていることが再導入の理由だという。

BMW i3
BMW i3

充電ネットワークが未整備で、EVの普及が難しいとされる市場向けに、人気のSUVモデルの一部でRExドライブトレインを展開する計画だ。RExは、内燃エンジンを発電機として使用し、バッテリーに電力を蓄え、電気モーターで駆動する仕組み。1回の給油で1000km以上の走行が可能になると期待されている。

X5に加え、最近発表された6代目X3と2026年に発売予定の2代目X7にもRExドライブトレインの採用が検討されている。3車種とも、従来のCLAR(クラスター・アーキテクチャー)プラットフォームをベースにしている。

BMWはREx技術で実績がある。2013年に量産車として初めてi3 RExを発売し、発電用の2気筒ガソリンエンジンを搭載していたが、2018年の生産終了以降は、他のモデルへの展開は行われていない。

関係者への取材によると、BMWの取締役会は今週、RExの量産化に先立ち、エンジニアと最終仕様を確認する予定だという。

同社CEOのオリバー・ツィプセ氏は、これまでRExに消極的だった。

昨年、ツィプセ氏は投資家向けの会見で、「大型のバッテリーと内燃エンジンを組み合わせるのは、経済的に限界があります。当社のPHEVは現在、約100kmの電気航続距離を実現していますが、価格的にもこれが顧客に納得していただける最適なポイントだと考えています」と述べていた。

水素燃料電池のレイアウトを踏襲?

X5は現在、ガソリン、ディーゼル、PHEV、水素燃料電池の4種類のドライブトレインが用意されている。水素燃料電池モデルのiX5ハイドロジェンは少量生産向けだが、同社のゼロ・エミッション車開発において重要な役割を果たしてきた。

現時点では、RExモデルがこのラインナップに新たに加わるのか、あるいは既存のPHEVの代わりに導入されるのかは不明だ。

BMW iX5ハイドロジェン
BMW iX5ハイドロジェン

ZF社が新開発したRExアーキテクチャーは、『eRE』と『eRE+』の2つのバリエーションからなる。前者には電気モーター、遊星ギア、統合コンバーターが組み合わされている。後者にはさらにクラッチとディファレンシャルが加わり、エンジンで直接車輪を駆動できるようになる。エンジン単体の出力は150psから204psまで。

eREおよびeRE+は、エンジンを最適な回転域で動作させることで燃費効率を高めている。排出ガスの削減と構造の簡素化を実現するとともに、従来のハイブリッド・パワートレインに比べて開発サイクルの短縮と生産コストの低減が可能になる。

BMWは、このZF社製のシステムを、自社の800Vアーキテクチャーを採用した第6世代(Gen6)電動ドライブトレインと組み合わせる予定だ。開発では、水素燃料電池車iX5ハイドロジェンのノウハウを活用している。

iX5ハイドロジェンは水素を動力源としているが、大まかな仕組みはRExに近い。燃料電池が発電機の役割を果たし、電力をバッテリーに蓄え、その電力で電気モーターを駆動する。パワーユニットと駆動輪の間には機械的な接続がない。BMWは内燃エンジンを搭載したRExでもこれと同様のレイアウトを用いる方針だ。

しかし、このプロジェクトに携わるBMWのエンジニアはAUTOCARの取材に対して、見た目ほど簡単なことではないと語っている。

「PHEVや純EVに使用しているバッテリーを、レンジエクステンダーにそのまま採用できるわけではありません」と、ある関係者は言う。

「サイクル効率も熱負荷も異なるからです。レンジエクステンダーでは、エンジンが動作している間、継続的な充電効果があります。そのため、エネルギー管理システム全体をそれに合わせて調整しなければなりません」

X5は、RExモデルだけでなく、純EVモデルも2026年に発売される予定だ。EVモデルでは、第6世代電動ドライブトレインと円筒形セルバッテリーを採用する。

BMWは、i3、iX3、iX5を含む次世代のノイエクラッセEVが、現在のEVと比較して技術面で「飛躍的な進歩」を遂げるものになると述べている。主な改良点としては、円筒形セルを採用した新しいタイプのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーが挙げられる。第5世代(Gen5)リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーに比べて密度が20%高く、パッケージングも容易だという。

その結果、航続距離は30%、エネルギー消費効率は20%、充電速度は30%向上するとのことだ。また、生産コストも50%削減され、車両価格を抑えられるとしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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