ポルシェ918スパイダー・プロトタイプに試乗

公開 : 2012.03.22 18:30  更新 : 2017.06.01 00:55

ポルシェ918スパイダーの走行可能なプロトタイプが、南イタリアのノルド・テスト・トラックでテストされた。

エンジン・ベイから上方へ伸びる2本のテールパイプを持つずんぐりとした2シーターは、100万ポンド(1億3000万円)のスーパースポーツというよりも、何かハンドメイドのプロジェクト・モデルのように見える。

このプロトタイプは、ガソリンと電気によるハイブリッドが確実に動くかどうかを見るためのローリング・シャシーだ。エンジン、モーター、バッテリー、その他電子部品が信頼に足ると判断されれば、今度はポルシェは生産型に近いプロトタイプを製作する。そして、それは耐久テストをメインに行われる。もちろん、クラッシュ・テスト用のプロトタイプも存在する。

正方形。918スパイダーの最初の印象だ。とても小さく見える。長さ4643mm、幅1940mm、高さ1167mmというサイズは、911カレラGTと比べて、30mm長く19mm広いにすぎないのだが。ホイールベースは全く同じ2730mmだ。

2シーターのキャビンの内部は、配線がいたるところにあり、乗り込むのは用意ではない。幅の広いカーボンファイバーのサイドシルを乗り越えても、ワイヤーと電子機器がキャビン内部に散らかっている。

911GT3と同じシートと6点式のハネースが備え付けられているが、シート・ポジションは地面から270mmの高さにある。この数値はプロダクション・モデルでも代わることはない。カレラGTよりも低く、おそらく、市販モデルとしては最も低いシート・ポジションを持つ1台となろう。

一旦シートに収まれば、その低いダッシュボード、911のステアリング・ホイール、ボクスターのインストルメントと機器、幅広いセンター・コンソール、短くて太いギアレバー、ワイドなウィンドスクリーン、そして限られた後方視界を理解することができる。このキャビンは、かなり即興で造られているようで、プロトタイプを確実にドライブすることだけが考えられているようだ。

プロトタイプのルーフはフィクスドであったが、プロダクション・モデルは取り外し可能なものとなるはずだ。

今回、私のお抱え運転手を努めてくれたのは、ポルシェの開発技術者のオルガー・バーテルズだった。そして、彼がその右足を重々しく踏み出した。

第一印象? そのトルクフルなフィーリングに驚かされるばかりだ。

中央に搭載されるエンジンは4.6リッターのV8。ポルシェLMP2レーサーの3.4リッター・エンジンをルーツに持つものだ。そして2台の電気モーターは762bhpと76.3kg-mのパワー、トルクを発揮する。918スパイダーは、これまでで最もパワフルなロード・ゴーイング・ポルシェであることは間違いない。

電気的パワーの蓄えは直結でフロント・アクスルに供給され、その他のパワーはリア・アクスル上に取り付けられた7速のデュアル・クラッチ・ギアボックスによりリア・ホイールまたは4輪すべてにデリバリーされる。

ポルシェのシミュレーションによれば、0-100km/h加速が2.8秒、0-200km/hが8.9秒、そして0-300km/hが26.7秒という数値がはじき出されている。

純粋な電気モードでは、クルマは静寂のままスタートする。速度が高まるにつれ2台のモーターが唸りだし、カーボンファイバーのホイール・ハウジングに石のあたる音がするようになる。スタンディング・スタートのトラクションは素晴らしいものがある。しかし、最も私の注意を引くのは、激しい加速感だ。そしてやっとストレートエンドで、918スパイダーのノーマル・アスピレーション・エンジンに、抑えられた響きと共に火が入る。

生産型においては、レブ・リミットは9200rpmにチューニングされている。それはカレラGTよりもシャープな反応を持たなければならない。但し、信頼性のためにプロトタイプでは7000rpmにレブ・リミットは抑えられている。その音は少々期待はずれのバリトンであった。

ストレート・エンドになると、カーボン・セラミック・ブレーキの出番だ。8−6ピストン・キャリパーが、ABSの手を煩わすことなく強力なストッピング・パワーを発揮する。

918に搭載されるKERSは運動エネルギーを集めるのに用いられるハイテクな回生システムで、ポルシェによれば通常のKERSの3倍効率的だという。ストッピング・パワーをリチウム・イオン・バッテリーにチャージすることができる。その電気レンジによる走行は最高速度150km/hで26kmに限られるという。

カレラGTのようなプッシュロッド・サスペンションではなく、コンベンショナルなレイアウトを持つ918スパイダーのサスペンションは、非常に安定した乗り心地を持つ。スラロームでもロールを感じさせない。重いパーツはすべてクルマの中心部より下にあることからも用意に想像がつく安定感だ。機敏性も非常に印象的だった。

空力的パッケージに関しては、リア・スポイラーが325km/h時に200kg以上のダウンフォースを引き出すというが、このプロトタイプではそれは明確にはならなかった。

918スパイダーをポルシェは、得意なスーパースポーツではなく、優秀なオールラウンダーに仕上げていくようだった。

2013年9月18日はポルシェだけでなく、スーパーカーの歴史においても記念すべき日となるだろう。

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