車輪が3本付いたフレームに原始的なエンジン 3輪自動車レースに参戦 後編

公開 : 2019.09.15 16:50  更新 : 2020.12.08 10:56

1902年「ド・ディオン・ブートン」 オーナー:デビッド・カード

デビッドのビンテージ・マシンへの興味は1960年半ばまでさかのぼり、この週末のレース参戦へとつながっている。「英国映画のアイスコールド・アレックスで見た緊急車両を今でも鮮明に覚えています。それ以来、古いクルマへの興味は深まり、自分でも所有したいと思ってきました」

1971年にデビッドは1930年代後半から製造されていたMG TCを手に入れ、双子の兄弟とともにレストアした。「その後、1981年にロンドンからブライトンまで走る、ベテラン・カー・ランに参加して、なにか感じるところがあったんです。そこで中古車情報雑誌のエクスチェンジ・マーケットを読んでみたら、今回も乗ってきた8psのリア・エントランス・トノーを見つけました」

1902年「ド・ディオン・ブートン」 オーナー:デビッド・カード
1902年「ド・ディオン・ブートン」 オーナー:デビッド・カード

クルマはその2年前にスイスのシャトーで発見され、キャブレターのエア調整用ネジが掛けていことに気づくまで、かなり手を焼いたそうだ。「コーススレッド・ネジをキャブレターに差し込んで、人生で一番の力で挿入しました。そしてハンドルを3回転させて以来、まったく問題はなくなりました。手入れも良くしていると思います。可動部分はすべてグリスアップしてあります」 とデビッドは話す。

「殆どの機能部品は露出しているので、グリスアップは簡単で、500kmくらいならそのまま走れます。お金もかかっていますが、あまり振り返らないようにしています。むしろ、これほどの喜びを与えてくれた、最高のお金の使い方だと思います。田舎道を走らせれば、タイムマシンのように、新車だった頃と同じ音や匂い、体験が味わえるんですから」

1896年「レオン・ボレエ」 オーナー:デイブ・ピタック

フランス製のレオン・ボレエのエンスージャスト、ピタックが古い機械へ興味をいだいたのは幼少期。彼の叔父がキングストンで自動車工学の講師をしていた影響による。ビンテージ・シルバーストーンというクラシックカーのイベントに連れて行ってもらっていた。「まだ10歳くらいの時、消防マーシャルを体験させてくれました」

「わたしの初めてのビンテージカーは、3ホイラーも含めるなら、初期のモーガンです。しかし、わたしにとって本当の意味でのビンテージカーは、このレオン・ボレエ。クルマとオートバイをともに愛する気持ちを結んでくれるものです。ロンドンからブライトンまで走るベテラン・カー・ランや、パイオニア・ランというイベントに参加していますが、レオンはモーターサイクルに該当します」

 1896年「レオン・ボレエ」 オーナー:デイブ・ピタック
1896年「レオン・ボレエ」 オーナー:デイブ・ピタック

ピタックがボレエを手に入れたのは1983年。それ以来、ずっと魅了されているという。「エンジンの最高出力は3.5psで、排気量は865ccです。142mmもあるロングストロークなので、トルクフルなんです。電気もなく点火プラグはないので、バーナーが付いています。キャンプで使うオイルストーブのようにガソリンを燃やして、炎で細いパイプを加熱します。オリジナルはプラチナでしたが、今はステンレス製です。それが、点火プラグのかわりなんです」

「高温のガスは圧縮され、燃焼を引き起こします。エンジンの点火時期の制御は殆ど不可能ですが、炎の量の加減で多少は可能です。熱く加熱することで燃焼を促し、より多くのパワーが得られます」

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