【公道全力の楽しさ】生産終了 ホンダS660の良さ 今あらためて

公開 : 2021.04.25 05:45  更新 : 2021.10.13 12:13

制限速度内で手に入る快感

ミドシップに搭載されるエンジンは、S07A型と呼ばれるターボエンジンだ。

このエンジンは型式こそ初代Nボックスに搭載されたものと同一だが、専用のターボチャージャーを採用するなどした専用のもの。

ホンダS660
ホンダS660    神村 聖

スペック的には軽自動車の自主規制値である64psとなっているが、カッチリかつシフトゲートに吸い込まれるようなタッチの6速MTを駆使して走れば、体感的に遅いと感じるシーンはほとんどない。

道幅の広いバイパス道路の信号待ちからの発進時、1速7000rpmオーバーまで引っ張ってシフトアップし、2速でも6000rpmまで引っ張る。

後方で心地よい排気音を感じながら、脳内麻薬がドバドバと生み出されるようなシチュエーションであるが、実はこの時点での車速は60km/hほどであり、まったく持って合法となる。

また、交差点を曲がるだけでも、背中にあるエンジンを支点して曲がるというミドシップ・レイアウトならではの感覚が味わえてまたニヤリとしてしまう。

当然ワインディングを走らせても軽快なハンドリングは折り紙つきであるが、そこまで速度域を上げずとも楽しめるということこそが、S660最大の美点といえるのではないかと筆者は考えるのだ。

近年のスポーツカーでは馬力やラップタイム、ゼロヨン加速などわかりやすい数値でアピールすることも珍しくないが、そのポテンシャルを公道上で発揮できるケースはほとんどない。

そういった意味では、常に全力で楽しむことができる「遅いスポーツカー」こそが日常をより豊かにしてくれる存在になるのではないだろうか。

S660のカタログに書かれた「MICRO SUPER CAR」という文言こそが、それを物語っていると感じ取れたのである。

記事に関わった人々

  • 小鮒康一

    Koichi Kobuna

    1979年生まれ。幼少のころに再放送されていた「西部警察」によってクルマに目覚めるも、学生時代はクルマと無縁の生活を送る。免許取得後にその想いが再燃し、気づけば旧車からEV、軽自動車まで幅広い車種を所有することに。どちらかというとヘンテコなクルマを愛し、最近では格安車を拾ってきてはそれなりに仕上げることに歓びを見出した、尿酸値高い系男子。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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