【バッテリーを縦に置く】斬新なEVデザイン公開 効率化とコスト削減に貢献 英スタートアップ

公開 : 2021.08.05 06:25

英国のスタートアップ企業がバッテリーと座席の斬新なレイアウトを公開しました。特許技術の販売を目指します。

特許を取得したレイアウト

text:Jack Warrick(ジャック・ウォリック)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

ロンドンを拠点とするEVのスタートアップ企業が、効率性の向上とコスト削減を実現できるという斬新なバッテリー・コンセプトについて、詳細を公開した。

2019年に設立されたペイジ・ロバーツ(Page-Roberts)社は先日、バッテリーを水平ではなく垂直に搭載するユニークなEVのデザインコンセプトを発表した。このレイアウトは特許を取得済みだという。

ペイジ・ロバーツ社のデザインコンセント。縦に置いたバッテリーを中心に、背中合わせで4人が座る。
ペイジ・ロバーツ社のデザインコンセント。縦に置いたバッテリーを中心に、背中合わせで4人が座る。    ペイジ・ロバーツ

「わたしは、高効率と長い航続距離を実現しながら、2+2の座席を備えた低いスポーツクーペを開発するための技術的なルートを模索していました」と、創業者のフレディ・ペイジ・ロバーツはAUTOCARに語ってくれた。

「最初の分析では、この方式は単に大きなバッテリーを搭載するだけでなく、多くの利点があることが明らかになりました。特に効率とコストの面で利点が大きく、他の用途への可能性を探るべきだと考えました」

このデザインは、一般的な2+2の座席配置をベースにしている。クルマでの移動は1人または2人で行うことが多いから、というのがその理由だ。

床下搭載と同等の低重心化

同社の研究によると、空力特性の改善と軽量化により効率性(電力消費効率)が向上し、さらに、最大60kWhのバッテリーを床下に搭載した車両と同等の低重心を実現しているという。

また、同社はこのデザインによって、航続距離の短さ、ICE車に比べた価格の高さ、充電時間の長さなどの障壁を取り除くことで、EVの普及を後押しできると結論づけた。

ペイジ・ロバーツ社のデザインコンセント
ペイジ・ロバーツ社のデザインコンセント    ペイジ・ロバーツ

「これらの障壁を取り除くには、小型のバッテリーで低価格を実現するか、大型のバッテリーで航続距離を確保するか、どちらかを選択する必要があることがわかりました」と、ペイジ・ロバーツは述べている。

コンセプトでは、ボディ、モーター、トランスミッション、サスペンション、ブレーキなどの車体部品を軽量化し、使用する原材料を削減することで、製造コストを最大36%削減できると考えられている。

また、バッテリーの小型化や軽量化もコスト削減に貢献するとされている。

小型車の需要を満たす

利点の多いコンセントだが、すぐに生産に移行するわけではない。同社は次のように述べている。

「このデザインで生産を開始するつもりはありません。これは、バッテリーと座席の配置による可能性を仮想的に示すものです。この研究を基に、当社は車両レイアウトと車体構造に関する多くの特許を取得しました」

創業者のフレディ・ペイジ・ロバーツ
創業者のフレディ・ペイジ・ロバーツ

創業者のペイジ・ロバーツは、「現在、この技術の顧客として、大手やニッチな自動車メーカーを探しているところです。また、デモカーの製作を含め、この技術を推進することで相互に利益を得られるパートナーを求めています」と述べた。

また、小型車の人気が高まっているにもかかわらず、メーカーが開発を進めないのは、SUVが大衆市場を席巻しているからだと主張している。

「結局のところ、メーカーはSUVの生産から離れたくないのです。なぜなら、SUVはお金になるからです。欧州のSUV市場は今年、大きな成長を遂げており、特にEVのSUVが注目されています」

「しかし、わたし達の生活の変化により、小型車の需要が高まっています。出生率の低下、リモートワーク、レンタル事業の台頭、公共交通機関への投資の増加などにより、クルマは何よりもレジャー向けになりつつあります」

「当社のデザインが目指しているのは、小型車に対する消費者の需要を満たしつつ、メーカーの収益性を維持することです」

ペイジ・ロバーツは今後、このデザインに興味を示すメーカーや技術者、投資家との関係構築に注力するとしている。

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