中国BYD、日本乗用車市場へ参入 ディーラー100か所整備 劉社長に訊く「対面販売」にこだわるワケ

公開 : 2022.07.21 20:14  更新 : 2022.07.21 22:34

斬新装備 日本導入の3モデル

3車種のスペックや特徴を紹介しておこう。

アット3

アット3のサイズは全長4455mmx全幅1875mmx全高1615mmで日本で乗るのにちょうどいいサイズ。

日本へは3モデルが導入される。左からシール、アット3、ドルフィン。
日本へは3モデルが導入される。左からシール、アット3、ドルフィン

駆動方式は前輪駆動で、フロントに出力150kW(204ps)のモーターを配置。

容量58.65kWh、BYD独自開発の安全性の高い「ブレードバッテリー」を搭載し、1充電で485km(WLTP方式)の走行を可能としている。

後部座席に乗ってみたが、エクステリアデザインの美しさもさることながら、インテリアの斬新なデザインや、遊び心あふれる機能性に感動した。

例えばドアポケットには実際に音が出る「弦」のようなものが採用されている。しかもドア4枚にすべてだ。

楽器のような機能を持っており、指ではじけば3本の弦はそれぞれ音程も異なる。

先進の電装技術を多数盛り込みながら、ドアポケットには指で音を出すアナログな楽器を採用するなど、ガソリン車を作ってきた自動車メーカーには到底マネができない。自由で新しく、ファッショナブルな装備が満載である。

ドルフィン

ドルフィン=イルカの名のとおり、2021年よりスタートした新たな商品群「海洋」シリーズの第1弾で「e-プラットフォーム3.0」を初めて採用したモデルとなる。

ボディサイズは全長4290mmx全幅1770mmx全高1550mm。日本でも扱いやすいコンパクトサイズとなっている。

搭載するブレードバッテリーはスタンダードモデルが容量44.9kWh(WLTP方式での航続距離386 km)、そしてハイグレードモデルが容量58.56kWh(同じく471km)。日本での発売は2023年半ばを予定している。

シール

こちらもドルフィン同様、「海洋」シリーズのモデル。

2022年5月に発表されたばかりのBYD最新車種となる。

美しさとスポーティさ、プレミアム感もたっぷりのルックスが特徴だ。

ボディサイズは全長4800mmx全幅1875mmx全高1460mmでスタンダートモデルとハイグレードモデルが用意されている。

スタンダードは後輪に出力230kW(313ps)のモーターを搭載するFRモデル、ハイグレードは前に160kW(218ps)のモーターを加えた四輪駆動モデルでバッテリーは2グレードとも容量82.56kWhを搭載。

WLTP方式での航続距離も2モデルとも555kmと500km超を誇る。日本には2023年の下半期に投入を予定している。

社長に聞く なぜ対面販売?

ここで気になるのは、BYD車の販売方法である。

2022年3月に最新のEVアイオニック5とともに、久しぶりに日本市場へ復帰した「ヒョンデ」(HYUNDAI)は「オンラインのみ」の販売方法を採用したことで話題を呼んだ。

劉社長は「クルマは『買ってから』がお付き合いの始まり」という。なお、感染対策を十分におこなったうえで取材をおこなっています。
劉社長は「クルマは『買ってから』がお付き合いの始まり」という。なお、感染対策を十分におこなったうえで取材をおこなっています。

しかし、BYDでは対面販売をおこなうべく2025年までに全国100か所のディーラー網を整備するという。

その理由を日本在住歴20年以上のBYDジャパン劉社長は以下のように話す。

「オンライン販売はいつでもできます。すぐにでもできます」

「しかし、BYDは乗用車ブランドとしては新しく、また、EVというまだ多くの人にとってはなじみのない分野のクルマを販売するのです」

「だからこそ、ディーラーとお客さまとの信頼関係を築くうえでもディーラー販売にこだわっています」

「クルマは『買ってから』がお付き合いの始まりです。アフターフォローを対面でおこなうことに大きな意義を感じています」

「ひとまず3年間で全国100か所の販売・整備拠点を考えています。すでにディーラーとなっていただける販売業者様の募集もおこなっています」

「実際にBYDのEVにサーキットなどで試乗いただいて、いったいどんなクルマなのか? 世界トップクラスの販売台数というが中国製のEVがほんとに日本でちゃんと走るのか? そのような疑問も実際に乗って触れていただいて解消していただいています」

1度に3車種導入されることにも驚いたが、やはり100か所のディーラーを整備することが今回の最大の驚きである。

最先端の電子技術に感嘆させられる一方で、アナログで血の通ったコミュニケーションが自動車販売には重要と考えるBYD。

これからの展開が楽しみである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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