見て良し、走って良し フィアット500e 長期テスト(最終回) EVを身近な存在に

公開 : 2022.10.22 09:45

市街地で乗り回すクルマに完璧な動力性能

航続距離は、都市部で乗るコンパクトBEVとしては不足ないものの、それ以上でもない。WLTP値で320kmがうたわれるが、かなり甘い様子。満充電で273km以上の数字が表示されることはなかった。

高速道路を走ると、その距離は遥かに短くなる。充電が必要になるまで200kmほど。英国の充電インフラはまだ完全な状態ではないことへ、気付くことになった。

フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)

500eのハイライトといえるのが、パワフルなパワートレイン。市街地で乗り回すクルマとしては、完璧なほど小気味いい。赤信号からの発進加速は周囲を置き去りにするほど鋭く、65km/hを超えるまで勢いは衰えない。

多くのBEVと同様に、リラックスしたドライビング体験も魅力。回生ブレーキは、ノーマル・モードでは少々弱すぎるため、航続距離が伸びるレンジ・モードが丁度いい。強力な減速を得られ、アクセルペダルの加減で殆どの場面に対応できる。

うれしいことに、レンジ・モードでも動的能力が鈍くなることはない。航続距離を最大にするシェルパ・モードは、エアコンや加速力、最高速度に制限が生まれるものの、低い気温で効率が落ちる駆動用バッテリーを温存する最終手段になった。

実際、冬場には何度かお世話になった。得られる距離は数kmだとしても、ありがたい。

500e自体は、最大85kWまでの急速充電に対応している。現在のこのクラスでは褒められる能力だが、長距離旅行に適しているとはいえないだろう。

平均的な日常にスムーズに馴染める

長期テスト車のグレードは安価なアイコンで、装備的な不満もゼロではなかった。LEDヘッドライトはオプションとなり、ハロゲンが標準。夜には古い内燃エンジンの500に乗っているような気にさせられた。

ボディが小さいため困ることはなかったが、バックカメラもない。必要なら上級グレードを選ぶ必要がある。

フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)

500e 42kWh アイコンの英国価格は、2万8835ポンド(約475万円)から。ひと回り大きいBEVや、余裕のある内燃エンジン・モデルに並ぶ金額といえ、BEVは割高だと感じさせる。

とはいえ、総じてフィアット500eはコンパクトで機能的で、見た目の印象も良く、価格に見合ったBEVだといえる。英国の平均的な日常に、スムーズに馴染める。

もっと活発な500eをお探しなら、アバルト仕様も間もなく登場するという。BEVの小さなイタリアン・ホットハッチが、町を賑わせる日も遠くないようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    トム・モーガン・フリーランダー

    Tom Morgan-Freelander

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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