空力の職人技、シビック・タイプRがどう変わる? ホンダアクセスのリアウイングに付け替えて走る!

公開 : 2022.10.18 21:47  更新 : 2022.10.19 02:32

新型シビック・タイプRの純正アクセサリーをテスト。ギザギザの「鋸歯」が話題のリアスポイラーの効果は? 同じ車両でノーマル品と乗り比べます。

すでに「タイプR」 カスタムの余地は?

ホンダアクセス(HAC)はホンダ車の純正アクセサリーの開発と販売を行う本田技研工業の直系企業。

“純メーカー純正アクセサリー”と言えばフロアマットなどの用品を想像するだろうが、HACは走行性能に寄与するカスタマイズパーツの開発にも熱心であり、コンプリートカーとしてモデューロXを展開している。

新型シビック・タイプR発表時から話題となっているホンダアクセスのリアウイング(正式名:テールゲートスポイラー)。まったく同じ車両で、ノーマル版とホンダアクセス版の比較テストを行った。
新型シビック・タイプR発表時から話題となっているホンダアクセスのリアウイング(正式名:テールゲートスポイラー)。まったく同じ車両で、ノーマル版とホンダアクセス版の比較テストを行った。    前田惠介

内外装やスポーツサスなど多くのカスタマイズパーツを開発しているが、中でも注目すべきは空力パーツである。

空力チューニングと言えばダウンフォース主体に高速域でのコーナリング限界の向上や操安性の改善のイメージがあるが、HACはサーキットレベルの限界性能ではなく、山岳路・高速道路などの一般路走行で実感できる効果を狙っているのが特徴である。

そんな空力へのこだわりが生み出したのが、このシビック・タイプR用リアウイングだ。

ーーFF最速を求めて開発された。超高速域まで見越した空力設計も盛り込まれているーー

性能至上主義で開発されれば、上げ代があるわけもない。いわば完成型のはずのタイプRにHACウイングの効能があるのか。あるいは速さ以外の付加性能があるのか。大変興味深い試乗となった。

群サイで走る新型シビック・タイプR

試乗コースに選定されたのは、群馬CSC(サイクルスポーツセンター)。

全日本ラリー選手権のスペシャルステージにも使われるなど、モータースポーツとも馴染みのあるコースだ。

標準装備のリアウイング(写真)でコースを周回。その後に、同じコースをホンダアクセスのリアウイングに付け替えて検証する。
標準装備のリアウイング(写真)でコースを周回。その後に、同じコースをホンダアクセスのリアウイングに付け替えて検証する。    前田惠介

とはいえ基本的にはスポーツサイクル用のコース。幅員は狭く、コーナーはほとんどブラインド。舗装面の状況も荒れ気味。しかも雨である。試乗前からプレッシャーが半端ではない。

まずは標準装備のウイング。

どこからでもトルクフルなエンジン。深い舵角を与えてもトラクションが利いたハンドリング。ちょっとした直線で一気呵成に加速。

ブラインドコーナー分だけ早めにブレーキングして、制動を残しながらアペックスを踏む。

路面からの突き上げは細かく車体を揺すり、加減速や横Gの激しいG変化が加わり「揉まれている」感じ。タイプRのポテンシャルからすればまだまだ余裕なのだろうが、肉体的にも精神的にけっこう疲れる。

HACウイングに交換して再び試走路へ。

リアウイングが違うだけ どんな感じ?

揉まれるような揺れが収まっている。車体挙動の収束性がいい。サスチューンが変わったのか。

空力チェックということで標準ウイングでもコンフォートモード主体。HACウイングでも同様の走行モードを選択していたのだが、まるでサスチューンが変わったような感じで、不思議な感覚である。

ホンダアクセスのリアウイング。なめらかな空力特性を追求した開発陣は、鋸歯形状のデバイス(下面に連なっている三角形)に辿り着く。
ホンダアクセスのリアウイング。なめらかな空力特性を追求した開発陣は、鋸歯形状のデバイス(下面に連なっている三角形)に辿り着く。    前田惠介

収束性を高めるため高減衰にすれば路面当たりは強くなるし、短時間ではストローク量も減るが、HACウイング装着時でもストローク量やロール量は変わっていない。

揺すられ揉まれるような挙動が減った分だけ乗り心地がしなやかになった印象を受けた。コーナリングやトラクションの限界も変わらず、操縦性も同じ。

つまり限界性能は標準ウイングと変わらない。車両挙動の落ち着きと滑らかさ、収束感がよくなっただけである。

しかし、クルマや状況から受けるプレッシャーが減少したのは、肉体的精神的には大分楽になる。

タイプRで「楽」をキーワードにするのも少々違和感があるが、精神的な余裕は精度の高いドライビングの持続には重要であり、一発勝負の速さ狙いではなくアベレージの向上を求めるなら「楽」は高性能の構成要素の1つ。HACウイングがもたらした効果はそういう類のものである。

ならばどこがHACウイングと標準ウイングの走りの差異となったか。その違いはウイング下面形状に秘密があった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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