【中国市場で苦戦中】東風ホンダS7は走りが楽しいBEV!クルマは良くても中国人の好みには合わず?

公開 : 2025.07.24 11:05

2025年に入ってトヨタや日産は相次いで新たな中国専売BEVを発売。これが意外なヒットを見せています。しかし奮闘する日本勢の中にあって、ホンダは苦戦中のようです。中国車研究家の加藤ヒロトがレポートします。

トヨタ日産の中国専売BEVは意外なヒット

2025年に入ってトヨタや日産は相次いで新たな中国専売BEVを発売。これが意外なヒットを見せている。

2023年に発売された一汽トヨタ『bZ3』を皮切りに、合弁相手と共同で中国専売EVを開発してリリースする風潮があり、広汽トヨタ『bZ3X』や一汽トヨタ『bZ5』、長安マツダ『EZ-6』、東風日産『N7』もこれに該当する。

中国で発売中の東風ホンダ(東風汽車との合弁)『S7』に試乗。
中国で発売中の東風ホンダ(東風汽車との合弁)『S7』に試乗。    加藤ヒロト

逆風に立ち向かうべく奮闘する日本勢だが、その中にあって心配なのはホンダだ。2024年における中国販売台数は前年比30.94%減の約85万2300台、月間販売台数も2024年2月以降11ヵ月連続で前年割れとなり、改善の兆しは見られない。

かつての売れ筋だったアコードもBYDテスラ、トヨタ・カムリなどに押されているが、特にBEV事業はもっと悲惨で、2024年発売の『e:NS2/e:NP2』は毎月平均300台前後の販売で、2025年6月にいたっては両車ともに150台を下まわった。

そんな状況を一変すべく、2024年には新たな電動サブブランド『イエ(火へんに華)』をローンチ。まずは東風ホンダ(東風汽車との合弁)から『S7』、広汽ホンダ(広州汽車との合弁)から『P7』というSUVがリリースされることになった。今回はその最新車種である東風ホンダのS7を試乗した。

スポーティでカッコ良いBEV

初めに言っておくと、S7はかなり良いクルマだ。

サイズは全長4750mm、全幅1930mm、全高1625 mm、ホイールベース2930 mmと大きく、近未来的なルックスと合わさって強烈な存在感を発揮。2グレードのみのシンプルな構成で、最高出力268hp、最大トルク420NmのRWDが19万9900元(約414万3000円)、470hp、770NmのAWDが24万9900元(約517万9000円)で販売される。

シャープでエッジの効いた外装とは裏腹に、内装は物理ボタンが多い印象。
シャープでエッジの効いた外装とは裏腹に、内装は物理ボタンが多い印象。    加藤ヒロト

シャープでエッジの効いた外装とは裏腹に、内装は物理ボタンが多い印象を受けた。筆者は物理ボタン派なのだが、流行に敏感な中国の消費者は「古臭い」と感じるようで、中国新興勢のEVは揃ってエアコンやメディアはもちろん、ステアリング位置まで画面内で調整できるようにしている。

S7ではほかにも、中国車でもあまり見ないデジタルアウターミラーや、上下2画面構成のセンターディスプレイを採用するなどユニークな要素に溢れている。

ホンダは『イエ』シリーズを『走りも楽しいBEV』として展開したいようで、そのマインドはP7を軽く転がすだけでも感じられる。重量配分は前後50:50を実現し、全高を低く抑えることで純電動SUVでも爽快なフィーリングが味わえる。

今回試乗したのは469hpのAWDだが、街乗りで乗るには少々大げさ。車体そのものが良いので、268hpのRWDでも十分に事足りると感じた。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクという豪華な仕様のおかげで、乗り味は硬めでスポーティな印象だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    加藤ヒロト

    Hiroto Kato

    山口県下関市生まれ、横浜在住。慶應義塾大学環境情報学部に在学するかたわら、各自動車メディアにて「中国車研究家」として中国の自動車事情について「クルマ好き」の視点で多様な記事を執筆する。また、自費出版で中国モーターショーのレポート本「中国自動車ガイドブック」シリーズも手掛けている。愛車は1998年型トヨタ カレンと1985年型トヨタ カリーナED。

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