20mで魅了される魔法 ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(2) 変速を感じずトルクの波へ

公開 : 2025.07.24 19:10

若々しさを好む層がターゲットのゴースト・ブラックバッジ V12は600psと91.6kg-m 車内へ滲み出る格調 20mで魅了される魔法 信じられないほど滑らかな乗り心地 UK編集部が試乗

最初の20mで魅了される魔法

ロールス・ロイスの魔法には、大げさではなく、走り出して最初の20mで魅了される。スポーティさを高めた、ゴースト・ブラックバッジでも。

6.75LのV型12気筒ツインターボエンジンは、スターターの音が僅かに聞こえた直後に始動。完璧な滑らかさでアイドリングする。アクセルペダルの反応はこれ以上ないほどリニアで、8速ATは甘美なほどにシームレス。まるでクルーズ船のように進み始める。

ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(英国仕様)
ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(英国仕様)

圧倒的な勢いで発進したいという気持ちを、奪うほどの極上さ。それでも8速ATをローモードにすれば、0-100km/h加速4.5秒という素早さを、重厚感が増すエンジンサウンドとともに披露する。

もっと鋭い加速も叶えられたはずだが、ロールス・ロイスはあえてそうしなかった。このサルーンで、何が追求されているのかを物語る。

変速を感じずトルクの波へ乗るスタイル

とはいえ、ゴースト・ブラックバッジは間違いなく速い。フル加速時には、2507kgあるボディのリアが僅かに沈むほど。160km/hを超えると、不安定になることはないものの、ステアリングが少し軽く転じスピード感も小さくない。

仮に8速ATにマニュアルモードが備われば、更に運転を楽しめるかもしれない。珠玉のV12エンジンとの結びつきを、一層堪能できるだろう。ほぼシームレスに、変速を感じることなくトルクの波へ乗れるスタイルが、ロールス・ロイスらしいといえるが。

ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(英国仕様)
ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(英国仕様)

2代目ゴーストの走りで更に感銘を受けるのが、直感的な操縦性。ブラックバッジでも、ステアリングフィールの魅力度は変わらない。全力の7割程度で飛ばしている時が、スイートスポット。不気味なほどの安定感が、強い記憶を残すはず。

至極コンフォートでありながらスポーティ。動的な二面性が、ゴースト・ブラックバッジの魅力の根底にある。

信じられないほど滑らかな乗り心地

乗り心地も、信じられないほど滑らか。ファントムのように、ゆったりした上下動は僅かに残るが、路面と呼吸を合わせるような姿勢制御と、左右非対称な入力への対応力はお見事。有能なアクティブ・エアサスペンションが、余計な揺れを排除する。

高速での旋回中に大きな隆起部分を通過すると、鋭い入力を感じる場面はある。だが、ごく稀に、といえる程度だ。

ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(英国仕様)
ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジ(英国仕様)

8速ATをローモードにすると、サスペンションとステアリングが僅かに引き締まるものの、シャシーが明確に機敏になるわけではない。ロールス・ロイスとして、威風堂々とした佇まいを乱すことはない。

動的な限界へ迫ると、アンダーステアが顔を出す。ソフト志向なサスペンションは、減衰力が追いつかなくなる。だが、一歩引いて操っている限り、躍動的な走りを堪能できる。ゴースト・ブラックバッジの運転は、妥協なく上質で魅力的だ。

記事に関わった人々

  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロールス・ロイス・ゴースト・ブラックバッジの前後関係

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