栄枯盛衰ミニカー界で今なお盛業、『ノレブ』の復刻モデル【長尾循の古今東西モデルカーよもやま話:第9回】

公開 : 2025.07.23 17:05

元モデル・カーズおよびカー・マガジン編集長である長尾循による、古今東西モデルカーにまつわるよもやま話です。第9回は、栄枯盛衰を繰り返すミニカー界にあって、今なお盛業であるフランスのノレブが復刻したモデルの話です。

歴史的なモデルカーやブランドをリバイバル

一世を風靡した歴史的な名車をそのイメージを伝承しつつ現代にリバイバルさせるといった手法は、ニュー・ミニやフォルクスワーゲンビートルフィアット500などですっかりお馴染みです。

しかし自動車の場合は時代や環境に対応した、道具としての機能や実用性といった点を考慮しなくてはなりませんから、もちろん元ネタをそのまま再生産するというわけにはいきません。

今回はノレブが2008年に復刻した『SPOT-ON MODELS BY NOREV』の話です。
今回はノレブが2008年に復刻した『SPOT-ON MODELS BY NOREV』の話です。    長尾循

最新のクルマとしての機能を備えなくてはなりませんから、結果としてみんな『見た目はそれっぽいけれど、やはり元ネタとは生まれた時代が異なる最新のノリモノ』になります。

翻って、モデルカー趣味の世界。実はこちらの分野でも、一世を風靡した歴史的なモデルカーやブランドをリバイバルさせる、といった事案は珍しくありませんで、本物のクルマと異なるのは、道具としての機能や実用性についてアップデートは考えなくても良いということです。

だから昔のモデルの生産設備(というか金型)が残っていれば、それを使って再生産すれば良いわけです。例えば、お馴染みのトミカ。トミカはすでに絶版となったモデルなども、特注モデルや復刻モデルとしてしばしば再生産されたりします。

単なる再生産モデルとはちょっと事情が異なる

今回このコーナーでご紹介するノレブのミニカーも、そんな『復刻モデル』なのですが、単なる再生産モデルとはちょっと事情が異なります。

パッケージをご覧いただければお分かりの通り、そのブランドのロゴは『SPOT-ON MODELS BY NOREV』となっています。熱心なミニカーファンならばご存知のとおり、『ノレブ(NOREV)』は第二次世界大戦終結直後の1945年9月に創立されたフランスの玩具メーカーです。

いかにも英国のブランドらしく、英国車がその多くを占めていました。
いかにも英国のブランドらしく、英国車がその多くを占めていました。    長尾循

創業当初は子供用の玩具時計を設計、販売していましたが、1953年からはミニカーの製造にも乗り出し、今なお盛業。

そしてもう一方の『スポット・オン(SPOT-ON)』は、イギリス北アイルランドで生まれたミニカー。1935年に創立された玩具メーカー、トライアング社のダイキャストミニカー部門として1959年に生まれたブランドです。

同じ英国のディンキーとコーギーに続くミニカーブランドで、その作りは質実で堅牢ながら精密さも兼ね備え、現在のミニカーの標準スケールたる1/43に対し、1/42というほんの少し大きな縮尺を採用していることが特徴でした。

モデル化されるクルマは英国フォードのゾディアック、ヒルマン・ミンクス、オースチンA40、ボグゾール・クレスタ、アストン マーティンDBマークIII、ジェンセン541、ディムラー・ダートSP250、ブリストル406など、いかにも英国のブランドらしく英国車がその多くを占めています。

しかし、そんなドメスティックな製品ラインナップが災いしてか、スポット・オンは1967年ごろには終焉を迎えます。その後スポット・オンのミニカーは、通好みの希少なビンテージミニカーとして、熱心なコレクターたちの間で珍重されてきました。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    長尾循

    Jun Nagao

    1962年生まれ。企画室ネコ時代を知る最後の世代としてモデル・カーズとカー・マガジンの編集に携わったのち定年退職。子供の頃からの夢「クルマと模型で遊んで暮らす人生」を目指し(既に実践中か?)今なおフリーランスとして仕事に追われる日々。1985年に買ったスーパーセブンにいまだに乗り続けている進歩のない人。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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