クルマ産業へ偉大な貢献 オースチン・セブン 英国版クラシック・ガイド 誕生から100年 前編

公開 : 2022.12.24 07:05

自動車の普及に貢献したオースチン・セブン。誕生100年を迎える、彼の地での定番クラシックを英編集部がご紹介します。

英国を超えた自動車産業への偉大な貢献

フォード・モデルTがアメリカを自動車大国へ成長させたように、オースチン・セブンは英国の自動車産業へ偉大な貢献を果たした。生産を終えていた第二次大戦後も、景気回復を裏方で支えたといっていい。

今から100年ほど前、英国の自動車メーカーは手頃な価格のモデルを提供するため、熱心に開発へ取り組んでいた。しかし、走行が不安定だったり、安全性に問題を抱える例も少なくなかった。

オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)
オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)

そんななか、1922年にオースチンは小さな本物の自動車を生み出した。スチールとアルミニウムを組み合わせた構造を備え、家族4名が乗れるまともなボディを載せていた。4本のタイヤにはしっかりブレーキが与えられ、しなやかに動くサスペンションが支えた。

エンジンは現在でも主流といえる直列4気筒。夜道に備えて、電球によるヘッドライトも装備されていた。オースチン・セブンは、現代的な乗用車の基本形を完成させていた。

生誕から100年後、改めて対面してみると驚くほどボディは小さい。だが、当時の英国人は小柄な人が多かった。今以上に密な状況にも慣れていたから、全長2621mm、全幅1170mmというサイズでも批判が出ることはなかった。

もっとも、これから購入を考える場合は、自分がちゃんと乗れるか確かめた方がいいだろう。必要なら、同乗する予定の家族も。

現在のクルマで一般化した操作系を備える

小さなセブンは過去にない販売台数を記録し、オースチンを大きな自動車メーカーへ成長させた。その評判は世界中へ広まり、ドイツではBMW、フランスではローゼンガルト、アメリカではバンタムが、ライセンス生産を行っている。

ジャガーの前身といえるスワローも、セブンのシャシーに独自ボディを載せたモデルを提供していた。自動車黎明期にあった日本へも、積極的に輸入されている。

オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)
オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)

セブンで注目に値するのが、現在のクルマの運転で一般化している操作系を備えていたこと。前席の間にシフトレバーが配置され、ペダルは右からアクセル、ブレーキ、クラッチという順で足元に並んでいた。当時は、必ずしもこれが当たり前とは限らなかった。

とはいえ、運転には充分な練習が必要。クラッチは突然つながり、トランスミッションの変速には癖があり、ブレーキの制動力は充分とはいえない。可能なら、できるだけ生産後期のオースチン・セブンを選んだ方が賢明だろう。運転の難しさが大きく違う。

人気に後押しされ、ボディスタイルは多岐に及ぶ。4シーターのツアラーとサルーン、2シーターのスポーツとクーペのほか、カブリオレには2シーターと4シーターの両方があった。2シーターのバンもあり、英国には様々なセブンが生き残っている。

構造が単純だったため、毎年改良も重ねられた。オリジナルに拘るなら、リンゼイ・ミルズ氏著のオリジナル・オースチン・セブンという本を一読する価値はある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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