期待どおり!「熟成」ワゴン 新型フォルクスワーゲン・パサートへ試乗 巨大モニターは必要?

公開 : 2024.05.10 19:05

9代目VWパサートが登場 優れた実用性や快適性で成熟の仕上がり 驚くほど広い荷室 滑らかな1.5LマイルドHV 乗り心地向上 巨大モニターは必要? 英編集部が評価

巨大なモニターは必要? 時間をかけて作られた確かさ

バッテリーEVへのシフトと同時に、クルマのハイテク化が止まらない。一方で、熟成を重ねてきた歴史あるモデルの場合は、課題も引き起こしている。フォルクスワーゲン・ゴルフより誕生が古い、9代目となるパサートも、その1台といえるだろう。

パサートには、相応の熟成を期待する人は多いはず。機能的で、地に足がついたような、落ち着いた雰囲気を求めるのではないだろうか。周囲へ影響を与え、余計なものをまとわない、フィルターで濾したような深い味わいを。

フォルクスワーゲン・パサート 1.5 eTSI 150 R-ライン(英国仕様)
フォルクスワーゲン・パサート 1.5 eTSI 150 R-ライン(英国仕様)

チャットGPTへ対応した、15インチものインフォテインメント用モニターを、強く期待するファンは少ないと思う。9代目パサートのダッシュボードを見た途端、本当に必要なのか疑問を抱いてしまった。

ただし、やや前方視界を遮るほど巨大な画面は、ディスカバー・プロ・マックスと呼ばれるシステムに含まれるオプション。標準は12.9インチと、ひと回り小さい。最新モデルとして、この手の装備が売りになることも理解はできる。

実は、このシステムはパサートと並行して販売される、同社のID.7と基本的に同じ。メニュー構造を理解しやすく、ショートカット・アイコンも便利だ。実際に押せるハードボタンはないが、操作性は優れる。

恐らく、筆者は記憶にあるパサートを欲しているだけなのだろう。既存のイメージを守りながら、変化の激しい時代に適応させるというバランス取りは、難しいに違いない。9代目には、時間をかけて作り込まれたような、確かさがあることは事実だ。

秀でた実用性は期待どおり 驚くほど広い荷室

9代目パサートが基礎骨格とするのは、フォルクスワーゲン・グループのMQBプラットフォーム。8代目と異なり、市場を問わずサルーンは提供されない。今回試乗した、ステーションワゴンのみとなる。

スタイリングは、8代目ゴルフへ似た雰囲気を漂わせる。筆者の目には、フロントのオーバーハングが少し長すぎ、バンパーの下部が外へ張りすぎているように映る。ハンサムなことは、間違いないけれど。

フォルクスワーゲン・パサート 1.5 eTSI 150 R-ライン(英国仕様)
フォルクスワーゲン・パサート 1.5 eTSI 150 R-ライン(英国仕様)

ID.7も存在するため、パワートレインの選択肢は狭められた。英国市場の場合、電圧48Vのスターター・ジェネレーター(ISG)が組まれた、1.5L 4気筒ガソリンターボのマイルド・ハイブリッドと、プラグイン・ハイブリッドという展開になる。

ただし、後者は2024年後半の発売が予定されている。ディーゼルターボも、四輪駆動も導入されない。Rパフォーマンス仕様の登場を、期待して待とう。

秀でた実用性は、従来からのファンの期待へ応える。全長は先代より約150mm長くなったから、そのぶん車内空間も大きい。

高身長の大人でも、後部座席へ足を伸ばしてゆったり座れる。若干高さ方向は限られるものの、パノラミック・ガラスルーフを選ばなければ余裕が出るはず。開放感は減るかもしれないが。

テールゲートを開けば、初見なら驚くほど広い荷室が姿を表す。特に奥行きが深い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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