2psの小さな英国製EV ファイアフライ・スポーツへ(息子が)試乗 クルマへの興味の入口

公開 : 2023.01.03 08:25

運転の感覚を身につけるプログラム

技術的にも品質的にも、電動ライドカーとは比べ物にならず、コストは低くない。もしファイアフライを1台購入する場合、英国では1万1500ポンド(約190万円)が請求される。公道は走れないから、子どもが楽しめるのは私道だけになる。

ムリンガニによれば、北米や中東から問い合わせが入っているそうだ。子どものおもちゃに、この金額を支払うのだろうか。

ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)
ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)

英国に住む多くの人にとっては、筆者にとっても、ヤングドライバー・モーターカーズ・プログラムのトレーニング・セッションへ参加することの方が現実的なはず。1セッションが20分で、20ポンド(約3300円)で受けられる。

今回のファイアフライは試作車で、ステアリングラックの調整はできず、ペダルはアクセルのみ。回生ブレーキが強く効き、ワンペダルドライブできる。完成版にはブレーキペダルも付く予定だ。

本物のクルマらしく運転できるよう、セッション内容は考えられている。危険と隣り合わせの公道へ出る前に、子どもが運転の楽しさや感覚を身につける、価値のあるプログラムだと筆者は思う。

ファイアフライに乗るのは、4歳から10歳までが対象。三角コーンの並んだコースで、ステアリングホイールやペダルの基本的な操作を身に着けていく。

それ以降は、ヴォグゾールオペル)・コルサの実車へステップアップ。クラッチペダルの操作や交通ルールなど、複雑な内容を学ぶ。

運転やクルマに関心を示す若い層を増やす

英国の若いドライバーが交通事故を起こす確率は、平均で20%程度。だがムリンガニの統計によると、プログラムの卒業生では3.8%へ減るという。賢明な支出は、将来の損失を減らすことにつながるのだ。

話が難しい方向になってしまったが、ファイアフライを運転するアーチーは楽しそう。筆者を助手席に座らせて、笑顔でステアリングホイールを握っている。ダッシュボード上にあったバック用のスイッチも、使いこなしていた。

レッドのファイアフライ・スポーツと息子のアーチー、ブルーのホンダ・シビックと筆者
レッドのファイアフライ・スポーツと息子のアーチー、ブルーのホンダシビックと筆者

彼は試乗を終えると、ローソンにボディカラーはブラックが良いと印象を話す。まるで自動車評論家のように。休憩時間には、しっかりビスケットも摘んでいた。子どもは親の背中を見て育つようだ。

むやみに子どもの恐怖心を煽らず、過信させることなく、クルマの機能や特性の基礎を学ぶことは大切だと思う。幼い頃から正しく身につけることで、マナーの良いドライバーが増えるに違いない。運転やクルマに関心を示す子どもも増えるだろう。

英国でも、若者のクルマ離れが進んでいる。経済を支える大きな産業が激動の時代に生き残るうえで、非常に重要な取り組みだと感じた。誕生日のプレゼントに、ファイアフライはねだられたくないけれど。

ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)のスペック

英国価格:1万1500ポンド(約190万円)
全長:2100mm
全幅:−
全高:−
最高速度:24km/h
0-10km/h加速:1.9秒
航続距離:34km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:210kg
パワートレイン:ツイン電気モーター
バッテリー:110Ah
急速充電能力:−
最高出力:2ps
最大トルク:15.3kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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