【現役デザイナーの眼:BYDラッコ】軽自動車の基本形を忠実に踏襲 質感で差別化を図った堅実さ
公開 : 2026.07.30 11:45
現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎によるデザイン分析。今回取り上げるのは日本市場専用に開発された軽自動車EV『BYDラッコ』です。日本の軽自動車ならではの使い勝手も取り入れ、綿密に調査した形跡があるようです。
デザインにおいても日本をしっかり研究
BYDの新型車種である『ラッコ』は、日本市場専用に開発された軽自動車のEVです。このように海外メーカーが日本のために自動車を作るのは大変珍しいことですが、デザインにおいてもしっかり研究していることが伺えます。
特にホンダN-BOXを始めとするスーパーハイトワゴン軽自動車は、日本で一番売れている車種。国民車とも言える市場にどうデザインで回答するかも興味深いポイントでした。

ラッコのサイドビューは、N-BOXやダイハツ・タント、日産ルークスなど日本製スーパーハイトワゴンと大変よく似たシルエットです。全高は1800mmとライバルよりさらに高めですが、これは床下に搭載するバッテリーの影響かもしれません。
このクラスは寸法の制約が非常に厳しいため、どうしてもシルエットは似通います。サイドビューで差別化しやすいポイントは、主にDピラー周辺などリアまわりですね。
そのDピラーは、旧型ルークスのように窓肩からキックアップし、上部をルーフと分断させたデザインを採用。これはキャビンを薄く見せる効果があり、スポーティさや軽快感を演出しています。
タントを思わせるシルエットや立体構成
例えばダイハツ・ムーヴキャンバスのようにDピラーを全てブラックにする手法もありますが、ラッコのような背高パッケージではキャビン面積が大きくなりすぎて見え、バランスを崩しやすい。そのためN-BOXのようにしっかりDピラーを見せるか、ラッコのような処理にするかが現実的な選択肢になります。
また、リアゲートはライバルよりも立てており、ほぼ垂直です。売れ筋のN-BOXは、実はリアのサイドシルエットは割と丸いんですね。これで上部に絞りを効かせ、スタンスを良くしています。ラッコが公道でどのようなプロポーションを見せるのか、注目したいところです。

柔らかい表情のフロントは、一見すると標準仕様のタントを思わせるシルエットや立体構成です。顔まわりは軽自動車の中で比較的造形の自由度が高い部分ですが、それでも限界があるんですよ。
ラッコのようにヘッドライト周辺を絞り込み、バンパーとの段差を利用して立体感やワイド感、どっしりとしたスタンスを演出する手法は、多くのメーカーでも採用されています。商売に長けたBYDですから、将来的に存在感を高めたカスタム仕様が追加されるのかもしれませんね。
目にみえる質感作りの上作り
しかしラッコには、ライバルに比べて明らかに見栄えが向上した部位があります。例えば凝った光り方をするリアコンビランプは、横長のデザインを採用。これはスーパーハイトワゴンでは他に例がありませんが、その理由はやはりコストです。
ラッコのようにリアゲートをまたぐ横長ランプは、ボディ側とゲート側で分かれるため、当然部品費が上がります。コスト管理が非常に厳しい軽自動車では採用しにくいレイアウトなんです。

縦長ランプは実用車らしさを演出するには適していますが、乗用車らしい上質感では横長に一歩譲るでしょう。このあたりの判断を見ると、BYDは『目に見える質感づくり』が非常に上手いです。
その考え方はインテリアにも表れています。
ふたつのディスプレイを備えたインパネは、このクラスとは思えない質感です。ステアリングも、日本のユーザーは3本スポークの高級感あるものを好む傾向がありますが、その嗜好がしっかり反映されています。
さらに使いやすそうな電子式シフトレバーは、空調やシートヒーター、ハザードなどの物理スイッチと共にひとつのユニットとして集約。部品点数を抑えながら質感を高める工夫が見られます。
また、助手席前のトレイや各所の小物入れなど、日本の軽自動車ならではの使い勝手もしっかり取り入れており、ここでも綿密に調査した形跡がありますね。

























































































