日産、三菱、アルピーヌも生産 仏ルノー工場でタイヤを運ぶ人型ロボット『カルビン』(前編) 不気味なほど人間そっくりの動き

公開 : 2026.08.01 07:05

ルノーは仏ドゥエー工場の生産ラインで自律型ロボット『カルビン』の試験運用を行っています。既存の工場設備を維持したまま、人間によく似た動作で負担の大きい作業を淡々とこなします。その様子を詳しく紹介します。

重労働を淡々とこなす「新入社員」

ちょっと想像してみてほしい。アザラシの赤ちゃんを持ち上げる場面を。体重40kgもある、ずいぶん大きなやつだ。

さて、あなたの仕事が、箱からそのアザラシの赤ちゃんを拾い上げ、ベルトコンベアに乗せることだと想像してみてほしい。愛らしくぽっちゃりしたその生き物を、ほとんど休憩も取らずに何時間も連続でラインに運び続け、場合によっては夜通し作業することになるかもしれない。身体は丸々としていて柔らかいので、しっかりと掴むのは難しい。骨の折れる仕事だ。ほとんど人間離れしていると言えるだろう。

ルノーがフランスのドゥエー工場に導入した『カルビン』
ルノーがフランスのドゥエー工場に導入した『カルビン』

もちろん、これは仮定の話だ。しかし、ルノーのドゥエー工場で働く従業員にとっては、それほど誇張した話でもない。この工場ではいずれもEVとなる、『5』、『セニック』、『メガーヌ』、アルピーヌA290』、日産『マイクラ』、三菱エクリプス・クロス』が次々と生産されている。

新入社員のカルビンは、運搬車から生産ラインへタイヤを移す作業に汗を流している。そこから、タイヤはホイールと組み合わされ、車体に取り付けられるのだ。タイヤ一組の重さは赤ちゃんアザラシとほぼ同じで、丸い形をしているため、複数個をまとめて持ち上げるのがとてつもなく難しい。

これを1分間に4回、8時間続ける。つまり1シフトで4000本近くのタイヤを持ち上げるのだが、間違いなく世界屈指の過酷な労働であり、これを職業とするのはほぼ不可能だ。

もともとは人間用に作られたもの

ルノーは、このような従業員の作業負担を軽減する方法を模索していた。単純な解決策は、人間を完全に使わないようにすることだろう。しかし、従来の産業用機械を工場の狭い一角に据え付けるのは難しく、作業効率もおそらく人間には及ばない。

そこで次善の策として選ばれたのがロボットだ。しかし、ルノーはテスラや中国企業から購入するのではなく、意外な企業に目を向けた。1年前、ルノーは下半身不随患者向けの動力式外骨格を製造するスタートアップ企業、ワンダークラフト(Wandercraft)と契約を結んだ。

ルノーがフランスのドゥエー工場に導入した『カルビン』
ルノーがフランスのドゥエー工場に導入した『カルビン』

映画『エイリアン』でシガニー・ウィーバーが着用していた衣装の簡略版のようなこの装置は、車椅子や介護者を必要とする人々に自立を取り戻させることを目的としている。しかし、人間向けに設計されているため、人間の動きをそっくり模倣することもできるのだ。

過去1年間に4パターンの設計をテストした結果、ついに完成した。その名は『カルビン(Calvin)』。アイザック・アシモフの小説に登場するキャラクター、スーザン・カルビンにちなんで名付けられた。AUTOCARの取材班は、工場に実戦投入されたばかりのそれ(あるいは彼女と呼ぶべきだろうか?)が稼働するところを目の前で観察することができた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

タイヤを運ぶ人型ロボット『カルビン』の前後関係

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