約30年前の大胆すぎたRV『いすゞビークロス』 ハンドメイドに近い生産工程でボディカラーは限定含めて25色 SUV全盛の今なら結果は違った?

公開 : 2026.08.01 11:45

1997年に登場した『ビークロス』は、いすゞRVにおけるイメージリーダー的存在でした。ハンドメイドに近い生産工程で、ボディカラーは限定含めて25色を誇ります。SUV全盛の今なら結果は違ったのでしょうか? 内田俊一が振り返ります。

車名はヴィークロスからビークロスに

1997年3月24日、いすゞから1本のリリースが発行された。それは新タイプのRV車『ビークロス』の発表を記したもので、同年4月26日より全国一斉に発売するというもの。このビークロスこそ、いすゞRVのイメージを牽引すべく登場した1台だった。

『ビークロス(VehiCROSS)』とは英語の『Vehicle』(乗り物)と『Vision』(未来像)、そして『Cross』(交差)を合わせた造語で、オンロードとオフロード、日常と非日常のクロスオーバーを表現し命名された。

1997年に発売された『ビークロス』。いすゞRVのイメージを牽引すべく登場した1台だ。
1997年に発売された『ビークロス』。いすゞRVのイメージを牽引すべく登場した1台だ。    平井大介

それまでいすゞは『ビッグホーン』をはじめ個性的なRVを市場に展開しており、さらに市場の活性化を見据え次世代RVを模索し、コンセプトモデルを複数発表。その1台が1993年の第30回東京モーターショーに出品された、『ヴィークロス』というコンセプトモデルだ。

ヴィークロスは、3代目ジェミニ(760系)4WDのプラットフォームをベースに開発され、量産化も検討。しかし、いすゞがモノコックボディを採用した乗用車事業からの撤退を決定したため、実現には至らなかった。

しかし、このコンセプトモデルのスタイリングが高く評価された。そこでこのデザインを生かした新ジャンルのRVを創ろうという提案が、プロジェクトのひとつとして立ち上がった。

大きな特徴は『小回り開発』

これが、量産型ビークロス誕生のきっかけになった。ちなみに車名がヴィークロスからビークロスに変更されたのは、運輸省への認可申請の際、ヴィークロスという発音が分かりにくいとのことで、より覚えやすく親しみやすい名称に改めたからだ。

コンセプトは『オールラウンドリアルスポーツ』とされ、スポーティでダイナミックなデザインと、オンロードからオフロードまで路面を選ばない高い走行性能を実現したいという思いが込められている。

ビークロス(VehiCROSS)は、英語のVehicle(乗り物)、Vision(未来像)、Cross(交差)を合わせた造語。
ビークロス(VehiCROSS)は、英語のVehicle(乗り物)、Vision(未来像)、Cross(交差)を合わせた造語。    平井大介

ビークロス開発での大きな特徴は『小回り開発』と呼ばれるものだ。

ビッグホーンやミューといったクロカン4WD、RVモデルの系譜を受け継ぎつつ、スペシャリティSUVとしての商品企画、デザインから、生産技術、市場展開までを一貫して少人数チームで実現。これが小回り開発だ。

この小回り開発グループは、機動力を生かしたスピード開発と低投資による実現を前提としており、外板パネル類には、試作工程に近いセラミック(コンクリート)型工法を採用。通常よりも大幅に型投資を削減しながら部品を製作した。

また、社内で利用可能な既存コンポーネントを積極的に流用するとともに、社外部品も多数採用することで、コスト抑制と独自性の両立が図られた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    内田俊一

    Shunichi Uchida

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

関連テーマ

おすすめ記事

 

Google検索で『AUTOCAR JAPAN』の記事を見つけやすくする方法