メルセデス・ベンツ300SLでミッレミリア2026へ(1) 超希少なW194のステアリングを託されたUK編集部 混沌の公道レース

公開 : 2026.08.01 17:45

製造11台と、超希少なW194型メルセデス・ベンツ300SL。メーカーが所有する3台のうち1台が、マット・プライヤーへと託されました。6月に開催されたミッレミリア2026に挑むUK編集部のレポートです。

危険過ぎて2度も打ち切られたミッレミリア

公道で行われるクラシックカーレース、ミッレミリアへ出場すると、メルセデス・ベンツ300SLの重要性を理解できる。現行の関連規則がまとめられた冊子では、ゼッケンを貼る位置を示す図に、そのシルエットが用いられているのだ。

かつてのミッレミリア(1000 Miglia)は、今以上に本気のレースだった。イタリア北部のブレシアから中部のローマまでを往復し、各メーカーが速さを競った。走行距離は合計1000マイル、つまり約1600km。危険過ぎて、2度も打ち切られたほど。

メルセデス・ベンツ300SL 手前からW194型とW198型
メルセデス・ベンツ300SL 手前からW194型とW198型

最初に開かれたのは1927年。だが、1938年に11名の観客が命を落とすクラッシュが起き、当時の大統領、ムッソリーニが1939年の中止を決めた。戦後の1946年に再開され、1957年まで続くが、再び複数の命が失われ中止へ迫られた。

今回の主役は、W194型プロトタイプ・レーサー。同社が戦後にモータースポーツ復帰を果たした、1952年のミッレミリアで、4位入賞を果たした車両そのものだ。

同時期のイタリア製ライバルより非力だった177ps

ガルウイングドアと卵型フロントグリルが象徴的なW194型は11台作られ、その内の4台はメルセデス・ベンツが今も維持している。2台は廃車になり、2台は行方不明。3台は、厳密には純粋なW194と異なるが、個人のコレクションとして現存している。

今回の300SL プロトタイプ・ワークスレーサーは、5番目に製造されたもの。シャシー番号は194010-00005/52で、エンジンは3.0L直列6気筒。ツインキャブレターで177psの最高出力を得ていたが、同時期のイタリア製ライバルより非力ではあった。

メルセデス・ベンツ300SL(W194型/1952年式)
メルセデス・ベンツ300SL(W194型/1952年式)

トランスミッションは、Hパターンの4速マニュアル。シャシーは鋼管スペースフレームで、軽いアルミ製ボディが被されている。車重は900kgを切る。

初期のW194はサイドシルの位置が高かったが、ドライバーが駆け寄って乗り込むル・マン式スタートを想定し、00005/52では開口部が広げられている。工具類やスペアタイヤを搭載できるよう、広い荷室も備わる。

ドライバー中心で設計されたキャビン

74年も前のレーシングカーでありながら、内装の仕立てが丁寧なことに驚く。耐久レースを前提に、ドライバー中心で設計されているからだ。

タータンチェックのシートは座り心地が悪くなく、フロアにはカーペット。ダッシュボードは、クロームメッキのトリムが飾る。センタートンネル部分は、タイムカードや書類を収納できるよう、ポケット状になっている。

メルセデス・ベンツ300SL(W194型/1952年式)
メルセデス・ベンツ300SL(W194型/1952年式)

シフトレバーはS字状に曲がり、ノブはドライバーが手を下ろした先。巨大なステアリングホイールはウッドリムで、乗降時に取り外せる。スポークはX字状で、間からスピードとタコメーターが良く見える。補機類も。水温計は、酷暑の今年は特に重要だった。

2026年のミッレミリアは、6月上旬の5日間に開かれた。古いレーシングカーは特に、長時間の徐行を想定していない。ところが、コースは渋滞しがちなのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

メルセデス・ベンツ300SLでミッレミリア2026への前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

Google検索で『AUTOCAR JAPAN』の記事を見つけやすくする方法