カロッツエリアも苦悶 ジャガーEタイプ・フルア・クーペ 崩せない完璧な美しさ 後編

公開 : 2023.01.14 07:06

180km/hのクルージングを悠々とこなせる

スタイリングの仕上がりは別として、レストア後のKPH 4Cは状態が素晴らしい。クームズとフルアとの共同製作といえる当時の姿に忠実で、シャシーやエンジンの番号も完全に一致している。

内装は、基本的にシリーズ1のEタイプ 4.2 クーペから変更されていない。ブラックのレザーシートは運転席側でヒビが目立つものの、オリジナルのまま。外観ではわからないが、当初塗装されていたカルメン・レッドがボディの随所に残っているそうだ。

ジャガーEタイプ 4.2 フルア・クーペ(1966年/英国仕様)
ジャガーEタイプ 4.2 フルア・クーペ(1966年/英国仕様)

直列6気筒エンジンは丁寧に磨き込まれ、ポート加工され、ハイレシオのリアデフが組まれている。クームズは、ワイヤーホイールとコニ社のショックアブソーバーも指定している。180km/hでのクルージングを、4000rpm程度で悠々とこなせるらしい。

ステアリングホイールを実際に握ってみると、通常のEタイプ 4.2より明らかにたくましい。メカニズムには締まりがあり、回転数を問わず太いトルクが湧出する。短い直線でも、あっという間に160km/hまで加速してみせる。

適度に小柄で洗練されたEタイプは、生まれた時から優秀だった。現在でも、その印象は変わらないということを再確認する。

今から60年前は、価格帯を3倍まで広げても、これに匹敵する能力を持つ競合モデルは存在しなかった。クラシックカーとして、高い評価を保ち続けてきた理由でもある。

少々行き過ぎだった前後の処理

フルアが手掛けたEタイプ 4.2も魅力を欠いているわけではない。とはいえ、フロントノーズとテールエンドの処理は少々行き過ぎだったかもしれない。一方でインテリアには、もう少し手が加えられても良かったように思う。

ミニ・クーパーには高級な仕様が数多く生まれてきた。パワーウインドウにエアコン、豪華な内装素材が組み合わされていれば、ラグジュアリーで一層特別なEタイプが完成したことだろう。ジュネーブ・モーターショーでの反応も、違ったかもしれない。

ジャガーEタイプ 4.2 フルア・クーペ(1966年/英国仕様)
ジャガーEタイプ 4.2 フルア・クーペ(1966年/英国仕様)

協力:ペンディン社

ジャガーEタイプ 4.2 フルア・クーペ(1966年/英国仕様)のスペック

英国価格:1992ポンド(新車時)/9万ポンド(約1494万円/現在)
販売台数:1台
全長:4445mm
全幅:1676mm
全高:1220mm
最高速度:241km/h
0-97km/h加速:7.0秒
燃費:6.4-7.8km/L
CO2排出量:−
車両重量:1192kg
パワートレイン:直列6気筒4235cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:268ps/5400rpm
最大トルク:39.0kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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