小さく機敏で子犬のよう アバルト500e コンバーチブルへ試乗 154psの電動ホットハッチ

公開 : 2023.07.23 08:25

開放的な空間へ一変するコンバーチブル

反面、グリップ力自体は高いものの、ハンドリングバランスは安定志向。先に限界を迎えるのはフロントタイヤで、リアタイヤがラインから外れることはほぼない。アバルトらしく、テールを思い切り振り回せる個性までは得ていない。

専用のバケットシートは、サイドサポートがもう少し高くてもいい。カーブが連続する区間では、上半身が引っ張られがちだった。

アバルト500e コンバーチブル・ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e コンバーチブル・ツーリスモ(英国仕様)

短めのホイールベースと硬めのサスペンションという組み合わせで、通常のフィアット500eでも、荒れた路面では乗り心地が落ち着かなかった。アバルトでは更に引き締められ、市街地では細かな振動が収まらない。

少なくとも減衰力特性には優れ、よほど舗装が傷んだ区間を走らない限り、我慢を強いられるほどではないだろう。快適とは呼べないにしろ。

コンバーチブルといっても、ルーフ左右のフレームは残されているため、ハッチバックとボディ剛性に目立った違いはない様子。むしろ、ソフトトップを後方へ折りたためば、コンパクトなキャビンが開放的な空間へ一変し気持ちがいい。

走行中の乱気流も、想像したほど酷くはなかった。もし筆者が選ぶなら、コンバーチブルにするかもしれない。

プレミアムでニッチな電動モデル

英国価格は、ハッチバックより3000ポンド(約54万円)お高くなる。しかし残価設定型プランの場合、コンバーチブルは数年後の車両価格の設定が有利なため、月額の支払金額に殆ど差がない点もうれしい。

といっても、アバルト500eはそもそもお安くない。欧州には、よりパワフルで長い距離を走れる、価格帯が近似したバッテリーEVが存在している。多くの支持を集めることは難しいかもしれない。

アバルト500e コンバーチブル・ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e コンバーチブル・ツーリスモ(英国仕様)

アバルト側もそれは理解しているようで、欧州市場ではプレミアムでニッチな電動モデルに該当すると説明する。確かに開発水準は高く、走りも洗練されている。本物のホットハッチと呼ぶには、少し過熱ぶりが足りないかもしれないが。

アバルト500e コンバーチブル・ツーリスモ(英国仕様)のスペック

英国価格:4万1195ポンド(約741万円)
全長:3631mm
全幅:1683mm
全高:1529mm
最高速度:154km/h
0-100km/h加速:7.0秒
航続距離:264km
電費:5.8km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1435kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:37.3kWh(実容量)
急速充電能力:85kW(DC)
最高出力:154ps
最大トルク:23.8kg-m
ギアボックス:シングルスピード(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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