間違いなく面白い154ps アバルト500eへ試乗 毎日を笑顔にするホットなBEV 前編

公開 : 2023.05.25 08:25

フィアット500eをホットに仕立てたアバルトが登場。名門銘柄を名乗る実力を、サーキットと公道で英国編集部が評価しました。

独自チューニングで154psと23.8kg-m

最新のホットハッチは、すっかり複雑で高価になった。モデルによっては、英国では5万ポンド(約805万円)を超える例すらある。小さなボディへ搭載される技術も、レーシングカーさながら、といったことも珍しくない。

少し感傷的になる事実かもしれない。それでは、電動パワートレインならどう仕上がるのか。アバルト500eは、バッテリーEV(BEV)としては初となる、本気のホットハッチを目指したモデルといえる。

アバルト500e ツーリスモ(欧州仕様)
アバルト500e ツーリスモ(欧州仕様)

内燃エンジンで一時代を築いた象徴的なモデルは、次世代でも魅力を維持できるだろうか。先陣を切って体現を試みた、注目の1台だ。

名前が示す通り、アバルト500eがベースとするのは、BEVのフィアット500e。内燃エンジンの500をチューニングしていた、従来の手法へ通じる。500eではメカニズムの関連性が以前より強く、駆動用バッテリーやモーターは基本的に共有する。

駆動用モーターはフロント側に1基。内部ロスの改善や細かな改良が施され、最高出力154psと最大トルク23.8kg-mを叶えている。フィアット500e比で、35psと1.5kg-m増強された。

フロア下に敷き詰められる駆動用バッテリーは、実容量で37.3kWhのリチウムイオン。こちらはほぼ同一品だが、電流の制御が若干異なるという。

駆動用モーターからタイヤへパワーを伝達するギア比は、9.6:1から10.2:1へロング化。加速力と最高速度のバランスが、最適化された。好戦的なスタイリングが、スポーティ感を強めている。

内燃エンジンのアバルト695よりどこでも速い

これらの変更で、航続距離はフィアット500eの320kmから264kmへ短くなった。急速充電能力はDCで最大85kWと、変わりはない。

ステランティス・グループのBEV開発で主任技術者を務めるマウリツィオ・サルビア氏は、アバルトを名乗るに相応しい500eになったと話す。内燃エンジンのアバルト695より「どこでも速いです」。というコメントが、期待を膨らませる。

アバルト500e ツーリスモ(欧州仕様)
アバルト500e ツーリスモ(欧州仕様)

加速時間を確認すると、20km/hから40km/hまでの中間加速は695から約1秒短縮。40km/hから60km/hも同様で、ステランティス・グループが有するイタリア・バロッコのテストコースも、約1秒速く周回できるらしい。赤信号ダッシュも同様だろう。

0-100km/h加速時間は0.5秒だけ695に届かない。とはいえ、1.4Lの内燃エンジンは駆動用モーターより26psも強力。車重も約400kg軽いから、避けられない事実といえる。むしろ電動パワートレインは健闘している方だ。

シャシーでは、フロントがマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式となるサスペンションへ独自の設定が与えられ、ショックアブソーバーは専用品。ホイールベースは24mm伸ばされ、トレッドは60mm拡大された。

前後の重量配分は、フィアット500eの63:37から57:43へ改善。サソリマークの木箱でチューニングパーツがディーラーへ届き、組み付けられていた時代は過ぎ去ったが、しっかり動的能力は高められている。

タイヤはブリヂストンのスポーツコンパウンドを履く。これも専用開発品だ。

記事に関わった人々

  • マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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