999台限定のオープン ミニ・エレクトリック・コンバーチブルへ試乗 次世代への探り?

公開 : 2023.05.21 08:25

新型の登場が控えるなか、現行の電動ミニにコンバーチブルが登場。魅力的は認めるものの、妥協もあると英国編集部は評価します。

欧州市場向けに999台の限定

ミニのバッテリーEV(BEV)版、ミニ・エレクトリックには沢山の魅力が詰まっている。ただし、ハッチバックの航続距離はカタログ値で231kmと、長いとはいえない。駆動用バッテリーの容量が28.9kWhと、最近の基準では大きくないためだ。

そんなミニ・エレクトリックに、コンバーチブルが登場した。駆動用バッテリーの大きさは同じながら、魅力を一層高めることへ挑んでいる。多少の妥協も求められるが。

ミニ・エレクトリック・コンバーチブル(欧州仕様)
ミニ・エレクトリック・コンバーチブル(欧州仕様)

生産数は限定。欧州市場向けに999台が提供される予定で、英国には150台が割り当てられるという。

現在の市場を俯瞰してみると、このクラスのBEVでオープンモデルは存在しない。フィアット500eとアバルト500eにもコンバーチブルは設定されているが、実際は左右にルーフのフレームが残るランドレー・スタイル。完全なオープンになるわけではない。

英国価格は5万2500ポンド(約845万円)と、かなり強気。BMW 3シリーズ・クラスの電動4ドアサルーン、BMW i4よりも高い。今なら、2.0Lターボエンジンを積んだアウディTT ロードスターもオーダーできる。

既存モデルの派生版だと考えると、高コストな新技術が投じられているとは考えにくい。BEVのコンバーチブルとして、最初のモデルだとミニが主張しているとはいえ。

次世代の電動ミニに追加される可能性がある、コンバーチブル仕様の様子を伺っているのかもしれない。次期型のハッチバックは、2024年の発売が予定されている。

車重は105kgの増加 航続距離は199km

一般的なオープンモデルと同様に、本来あったルーフが切り取られたことでの剛性低下を補うため、ミニ・エレクトリックのシャシーやボディは補強されている。確かに、路面の不整を越えても粗野な振動は生じない。カシっとした安心感がある。

その代償として、車重は明らかに増えている。ハッチバックから105kgの増加となり、航続距離は199kmへ縮まっている。

ミニ・エレクトリック・コンバーチブル(欧州仕様)
ミニ・エレクトリック・コンバーチブル(欧州仕様)

0-100km/h加速時間は、ハッチバックの0.9秒増しとなる8.2秒。ソフトトップをたたむと開放的になり、風が吹き込み、実際よりスピード感は増すけれど。

航続距離は、現実的な条件下では160km程度になる。今回試乗した初夏の陽気のスペイン・マヨルカ島では、149kmがメーターパネルに表示されていた。太陽を楽しめるコンバーチブルでも、シティカーだと考えていい。

製造終了となったBMW i3と同じく、動力源として搭載するのはハイブリッド同期と呼ばれる独自開発の駆動用モーター。競合のBEVが採用するユニットと比べて、出力特性に優れていることが特長となる。

実際、走り出してみるとアクセルレスポンスは他に例がないほどダイレクト。130km/hへ迫っても、加速力が鈍るような素振りもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事