ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 後編

公開 : 2023.07.23 07:06

V6ターボを搭載した俊足ピックアップのサイクロンと、SUVのタイフーン。生産数1000台に留まった2台を英編集部がご紹介します。

まったくホイールスピンせずに突進

今回ご登場願ったブラックのGMCサイクロンは、英国に住むマーカス・ホーカー氏がオーナー。現在まで12年間も維持しているという。北米のフロリダ州で販売され、グレートブリテン島へやってきた。この土地には、10台しか存在しないらしい。

走行距離は約6万5000km。ターボを大径化し、ガソリン・インジェクターの容量を増やし、メタノール・インジェクターを追加し、サスペンションは社外品へ交換されている。ブッシュ類はポリウレタン製へ置換してある。だが、見た目はほぼノーマルだ。

GMCタイフーン(1992〜1993年/北米仕様)
GMCタイフーン(1992〜1993年/北米仕様)

欧州車に見慣れた筆者の感覚で表現しても、サイクロンは意外なほどコンパクト。ピックアップトラックへ馴染みが薄い人でも、プロポーションが優れていると感じるだろう。

ドアを開くと、大きな2スポークのレザー巻きステアリングホイールが迎えてくれる。着座位置はかなり高めだ。

ダッシュボードには、時速120マイル(約193km/h)まで振られたスピードメーターと、4800rpmからイエローゾーンになるタコメーターの並ぶメーターパネルが鎮座。残りの燃料のほか、油温と水温もわかる。実際の最高速度は、199km/hまで出せる。

V6ターボエンジンを目覚めさせると、V8エンジンよりドライでシャープなノイズを誇らしげに撒き散らし出す。4速ATのシフトレバーを傾けドライブを選択。ストロークの長いアクセルペダルを踏み込むと、まったくホイールスピンせずに突進を始める。

ディーゼルターボのように頼もしいトルク

テールを沈ませながら、48.3kg-mの最大トルクを無駄なく路面へ伝える。V6エンジンの咆哮を響かせつつ、変速のたびにウェイストゲート・バルブのホイッスルを奏で、ひたすらスピードを増していく。

100km/h前後までは、顔がニヤけるほど速い。アメリカの大手自動車メーカーによる量産車というより、有能なチューニングガレージが手を加えたような、粗削り感も漂う。

ブラックのGMCサイクロンと、ホワイトのGMCタイフーン
ブラックのGMCサイクロンと、ホワイトのGMCタイフーン

トルクはターボディーゼルのように頼もしい。スポーツカーとも異なる。滑らかな路面でも、ワダチのような路面の傾きの存在がステアリングホイールへ明確に伝わる。ステアリングレシオは驚くほどスロー。切り始めの反応も曖昧だ。

少なくとも、グリップ力は充分。荒れたグレートブリテン島のアスファルトでも、構わず突き進める。

シャシーはボディと別体のセパレート構造だから、動的能力は決して高くない。だが、サイクロンの怒涛の加速力は、GMCのマーケティングに大きく貢献した。ポルシェフェラーリと伍するという事実だけで、自動車メディアの表紙を飾れた。

サイクロンが生産されたのは、1991年の1年限り。最大積載量はピックアップトラックとしては充分ではない226kgに制限され、オフロード走行には明らかに向いていなかったが、2995台という台数が売れた。

しかしGMCは、開発コストからより多くの利益を求めた。そこで1992年に2台目となるカラハリの量産仕様、タイフーンが提供される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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