80点は得られる完成度 BYDシール 82.5kWhへ試乗 欧州市場のハードルは低くない

公開 : 2023.09.12 19:05

高性能スポーツとまではいえない

今回シールを試乗したのは、ドイツの一般道。後輪駆動となるシングルモーター版では、モデル3よりサスペンションがソフトで、乗り心地は全般的に良好だった。隆起部分などの衝撃を上手に吸収し、外界との隔離性が保たれていた。

他方、四輪駆動のツインモーター版は車重が130kg増える。そこでBYDは、負荷に応じて減衰力が変化する周波数感応式ダンパーを採用した。しかし、長くうねった路面では揺れが大きく、充分に対応しきれていないようだった。

BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)
BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)

走行中の風切り音やロードノイズは最小限。車内は至って静かだ。

BYDが高性能スポーツセダンと表現するだけあって、シールは動力性能には長けている。モデル3 パフォーマンスほどのダッシュは披露しなくても、530psのツインモーターは間違いなく速い。0-100km/h加速は、4.0秒を切ると主張される。

312psのシングルモーターでも、加速力は充分以上。パワーデリバリーが線形的で扱いやすく、印象としてはこちらの方が上といえる。

ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは限定的。操舵時の重さにも、一貫性が欠けている。コーナリング時のボディロールは良く抑え込まれているものの、BYDが主張する、高性能スポーツとまではいえないかもしれない。

ドライブモードをスポーツへ切り替えると、ステアリングホイールの重み付けが増す。それでも、情報量が豊かになることはないようだ。

英国人の選択肢へ加わるハードルは低くない

試乗中に気になったのが、速度警告システム。耳につくアラームだけでなく、音声で指定速度を超過したと警告されるのに加えて、間違っていることも少なくない。不必要ならオフにできるが、毎回タッチモニターのサブメニューまで辿り着く必要がある。

BYDシールの完成度は低くない。80点は与えられるだろう。ただし、テスラBMWヒョンデに並ぶ選択肢として、英国人へ認識させるハードルもまた低くはないと思う。

BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)
BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)

英国価格は未発表ながら、シングルモーターで約4万5000ポンド(約814万円)から、ツインモーターで約5万ポンド(約905万円)からが見込まれている。少なくとも、同セグメントの多くより、お手頃なことは間違いない。

◯:シングルモーター版の滑らかな乗り心地 充分な航続距離
△:ユーザーフレンドリーとはいえないシステム 感触の薄いステアリング

BYDシール・デザイン 82.5kWh(欧州仕様)のスペック

英国価格:約4万5000ポンド(約814万円/予想)
全長:4800mm
全幅:1880mm
全高:1640mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.9秒
航続距離:569km
電費:7.2km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2055kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:82.5kWh
最高出力:312ps
最大トルク:36.7kg-m
ギアボックス:シングルスピード(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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