世界に1台 超高級車ブランド「オーダーメイド」に注力 ロールス・ロイス本社工場拡張へ

公開 : 2024.05.20 18:05

新CEO率いるロールス・ロイスは、車両カスタマイズ能力を強化するために本社工場の拡張を行う。生産台数を増やすのではなく、顧客の要望に応えるためのものだという。

生産台数は増やさない

英国の高級自動車メーカー、ロールス・ロイス(Rolls-Royce Motor Cars)はウェスト・サセックス州グッドウッドにある本社工場の拡張工事にまもなく着手する。生産能力を改善し、収益性の高い車両カスタマイズ・サービスの拡大を図る。

同工場は2003年の開設以来、最も大規模な改装となる。

高度なビスポーク・プロジェクトにより生まれた「アルカディア・ドロップテイル」
高度なビスポーク・プロジェクトにより生まれた「アルカディア・ドロップテイル」    ロールス・ロイス

長年最高経営責任者(CEO)を務めたトーステン・ミュラー・エトヴェシュ氏の退任に伴い、昨年末にロールス・ロイスのトップに就任したクリス・ブラウンリッジ氏は、本社工場の拡張を優先課題としている。

ブラウンリッジ氏は2005年からロールス・ロイスの親会社BMWグループで要職を歴任してきた。就任後初めてAUTOCARの取材に応じ、工場の拡張は商業的な観点だけでなく、英国の自動車産業を育成するという観点からも重要だと語った。

「我々は重要なプレーヤーです。年間6000台の自動車を生産する小さな組織ですが、多くの人々の生活を支えているのです」

本社では2600人の従業員を抱え、英国内のサプライチェーン全体で約7500人を間接的に雇用している。工場拡張によってさらに約1000人の新規雇用が創出されると見積もるが、目的は生産台数の増加ではないという。

「この施設が建設された当時は、(年間)1000~1500台を生産することを前提としていました。今日でははるかに多くの自動車を生産しています」

「今後の戦略は、台数を増やすことではなく、車両のピスポーク(カスタム)の内容を充実させることです」

ビスポークは顧客の好みに応じてカラー、素材、装備などを細かく指定できる。ロールス・ロイスの事業の基本的な柱となっており、2023年にはビスポークの依頼件数と収益で過去最高を記録した。

また、車両デザインに深く関与できる高度なビスポークも手掛けており、世界に1台だけのクルマをオーダーすることができる。

ブラウンリッジ氏は「お客様のために、より多くのビスポーク車を提供するべく投資したい」と述べ、既存の生産ラインではビスポークの範囲が制限されていることを強調した。例えば、現在の塗装設備でツートンカラーを施せるのは生産台数のうち15%だが、顧客からの需要は50%を超えている。

こうしたボトルネックを解消すべく、2028年か2029年までに拡張を完了させる。ブラウンリッジ氏は、ロールス・ロイスを成長させ、ますます厳しくなる顧客の要求に応えることが最優先事項であると語った。

BMWグループだけでなく、MG、ローバー、ランドローバーにも在籍していたブラウンリッジ氏は、「クルマのことは何でも知っているつもりだった」とした上で、ロールス・ロイスの事業は「まったくもって魅力的」で「目からウロコ」だったと認めた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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