公道を走れる「XX」 フェラーリSF90 XX ストラダーレへ試乗 それでも改善の余地アリ

公開 : 2023.11.16 19:05

250km/hで540kgのダウンフォース

サスペンションのスプリングは強化され、車高も落とされた。アクスルの可動特性も改められている。ダンパーは通常のSF90と同じく、磁性流体を用いたアダプティブダンパーか、可変式ではないサーキット仕様のマルチマティック・ダンパーを選択できる。

ボディは、空力特性が極められた。フェラーリでは1995年のF50以来だという、リアのあからさまなウイングは、最も目立つアイテムだろう。

フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)
フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)

前後には新形状のディフューザーを装備。シャシー底面には、大きなボルテックスジェネレーターが与えられ、タイヤ周辺の気流を最適化している。フェンダー上の大きなルーバーは圧力や気流を整え、各部のエアベントは余分な熱を効果的に逃がす。

空力特性のシミュレーションを形へ落とし込むには、数か月を要する。ベースのSF90へ展開するには、充分な時間がなかったのかもしれない。これらがどのように相互作用するのか、観察し理解するほど、そのデザインへ惹き込まれる。美しい。

とはいえ、サーキット以外で実際にその効果を体感できる可能性は低い。環境が許すなら、250km/hでの走行時に540kgのダウンフォースが生まれるという。

フロントスプリッターは低い位置で突き出ているが、ノーズリフト機能は備わらない。うっかり割らないよう、注意は不可欠だ。

今回、SF90 XXの試乗が許されたのは、フェラーリのテストコース、フィオラノのみ。ボディはクーペで、アダプティブダンパーが装備されていた。

訴求力ある操縦性や落ち着き、調整域

同社の技術者が説明するとおり、一般道での穏やかなマナーを備えるのか、充分に確かめられてはいない。コーナーの縁石へ乗り上げた印象の限り、不足ない快適性は備えているようではある。

他方、通常のSF90の記憶では、マルチマティック・ダンパーは硬すぎ落ち着かない乗り心地だった。ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2Rというタイヤは、雨天時の能力が著しく低い。このXXでも、同様だと想像できる。

フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)
フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)

さて、フィオラノ・サーキットを走らせると、プラグイン・ハイブリッド・パワートレインの制御や、限界領域付近での操縦性が向上しているとわかる。ミッドシップ・フェラーリに相応しい、訴求力のある操縦性や落ち着き、調整域を獲得している。

ただし、最新のフェラーリとも異なる。新しいABSを活用し回頭性を促すべく、コーナーではブレーキングを遅らせ、減速だけでなく引きずりながら侵入するのが良いと、同社のテストドライバーは話す。

また旋回し始めたら、フロントアクスル側のパワーを活用。アクセルペダルの加減で、安定性を高めていけるとも説明する。

一連を習得すれば、確かに速い。それでも、1030psの最高出力を秘めたモデルだから、筆者の場合は慣れるまで10周以上走り込む必要があった。自然な印象は薄く、状況次第ではアンダーステアへ陥りやすいようでもある。

増加したダウンフォースは、高速でのブレーキングなどで実感できる。4速で抜ける高速コーナーでも、リアアクスルはピタリと安定していた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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