能力を「公道で使い切れる」セブン 買うには特別講習が必要なHPC ケータハム 7台を乗り比べ(2)

公開 : 2024.01.06 17:46

ドライバーの細かな操作へ逐一反応する

1977年式のセブン・ツインカムと同様に、クラシック・スプリント1600の動力性能はほどほど。シリアスなHPC 1700と比べると、柔軟なサスペンションのお陰で乗り心地は良好。ボディの動きは少し大きいが、一般道との相性はより優れる。

キャビンのフロアにはカーペットが敷かれ、レザー内装も備わる。長距離の自動車旅行にも出かけられそうなほど、居心地が良く快適。典型的な、素のケータハムらしい。

ケータハムJPE(1992〜2001年/英国仕様)
ケータハムJPE(1992〜2001年/英国仕様)

シャシーもベーシック。リアはリジッドアクスルで、5速マニュアルのシフトタッチは7台のベスト。ドライバーの細かな操作へ逐一反応する、第一級のセットアップにある。

比較すれば低めの、クラシック・スプリント1600のパワーに対し、グリップ力には余裕がある。読者が望むような、ドリフトシーンを写真へ収めるには、大胆なアプローチが求められる。それでも、目一杯きっかけを与えても、制御不能には陥らない。

落ち着いたダークグレーのセブンは、ケータハムJPE。元F1ドライバーのジョナサン・パーマー氏が、開発へ関わった高性能仕様だ。

1992年に、グレートブリテン島中部のパーマースポーツ・サーキットで、彼はケータハムの魅力へ惹き込まれた。それを機に、ジョナサン・パーマー・エボリューション、略してJPEが生まれることになった。

「ミニマリスティックなクルマです。爽快で速い。リアアクスルの直前に座っているので、滑り始めをすぐに感知できます。運転しやすく、すぐに慣れることもできます」。と、ジョナサンはその魅力を以前に語っている。

0-161-0km/hの発進・停止で世界記録を樹立

エンジンは、英国ツーリングカー選手権で戦うヴォグゾールのマシンと同じ、スウィンドン・レーシング・ユニット。1998ccの燃料インジェクションで、最高出力253ps/7750rpmを発揮。1t当たりの馬力は478psに達した。

費用を惜しまないプロジェクトといえ、エンジン単体のコストだけで1万3000ポンド。その結果、0-97km/h加速3.46秒という、圧倒的な速さを手に入れた。0-161-0km/hの発進・停止を12.6秒でこなし、世界記録を樹立してもいる。

ケータハムJPE(1992〜2001年/英国仕様)
ケータハムJPE(1992〜2001年/英国仕様)

そんな撃速のJPEを3年間所有しているのが、デイブ・グワトキン氏。落ち着いたグレーに、イエローの専用ロゴが際立つ。

ホイールはアルミより軽いマグネシウム製で、フェンダーはカーボンファイバー。ダッシュボードとシフトノブもカーボン。普通のセブンと違うことを、控えめに主張する。

スターターボタンを押し発進。クワイフ社製トランスミッションのストレートカット・ギアが、加速時に鳴く。めっぽう速いが、今日の7台の中では2番目だろう。低回転域では、感心するほど扱いやすい。

高回転域まで引っ張ると、ヴォグゾール・ユニットのドライなサウンドがソプラノへ転じていく。余りの速さに、少し圧倒される。更にプッシュしていくと、通常のセブンとは異なる次元へ動的能力が向上していることへ気づく。

アンダーステアは皆無といえる。姿勢制御はピタリと引き締まり、高速域でのバランスは秀逸。速度域の高いテクニカルコースでは、眼を見張るほど。

この続きは、ケータハム 7台を乗り比べ(3)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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