【15台で始まったDBシリーズ】アストン マーティン2リッター・スポーツ 後編

公開 : 2020.04.05 20:50  更新 : 2020.12.08 10:55

運転には遥かに高い集中力が必要

ナンバーOPD 51のDB1は、2014年に公道へ復帰。2017年にはグッドウッドに姿を見せた。「初めのうちは走らせる度に、どこかが故障していました」

「結果的に、ガレージで長時間閉じこもっていた父の仕事は、無駄になったようです。ですが、父が亡くなる前、完成したクルマを見て喜んでいました」

アストン マーティン2リッター・スポーツ「DB1」(1948年)
アストン マーティン2リッター・スポーツ「DB1」(1948年)

このDB1は、多くの自動車イベントへ参加する際の、サウスワードにとってのチケット。彼は熱烈な愛好家でもあり、積極的に運転する傍ら、現実的な見方も忘れない。

アストン マーティン2リッターが、スコットランドへの自動車旅行や、欧州大陸を横断するのに理想的なクルマではないことを認める。「オートバイで旅するように、自衛的に運転しなければなりません。現代のクルマより遥かに高い集中力が、運転には求められます」

DB1の車内はシンプル。フラットで機能的なダッシュボードに、巨大なステアリングホイール。ソフトトップも綺麗に畳まれ、車内は広々としている。

床にヒンジが付く四角いブレーキとクラッチペダルは重くはないが、ブレーキの不確かな感覚が、サウスワードの意見を裏付けるようだ。常に、2・3台先のクルマがどのように走っているのかを、注意深く観察しておく必要がある。

牧歌的な雰囲気のあるエグゾーストノートは、4気筒エンジンのアストン マーティンであることを隠さない。滑らかなボディとは一致しないサウンドに聞こえる。

エンジンは見た目と同様、堅牢で信頼性がある。マニフォールドには、奇妙なフィンが生えている。このエンジンは特別な雰囲気が一切ない。ブラウンが、ツインカム直6エンジンの見た目の魅力に惹かれたこともうなずける。

ブランドとしての第一章を飾った

クリーンな変速が嬉しい、ロング比な4速マニュアルを操る。4気筒は、ロングストローク・エンジンらしいトルクもなく、6気筒エンジンのような小気味いいレスポンスもない。加速は、正直いってかなり平凡。

サウスワードはリビルトは適切に行なったと考えているが、気に入らない場所もあるようだ。ゆっくり走らせているとステアリングには遊びが目立つものの、スピードを上げていくほどにフィーリングが改善していく。

アストン マーティン2リッター・スポーツ「DB1」(1948年)
アストン マーティン2リッター・スポーツ「DB1」(1948年)

速度域が高くなるとアンダーステアも消え、乗り心地も良くなり、安定性も増してくる。それまでのアストン マーティンでは叶えられなかった、現代的なまとまりだ。

2019年は、11月にNECクラシック・モーターショーに出展するのが最後。冬はアストン マーティンのゲイドン工場にある、小さなコレクションの1台として展示されて過ごす。

戦後のアストン マーティンの幕を開けるも、見過ごされてきた2リッター・スポーツ。デビッド・ブラウンのもと、その後のDBシリーズへと続くブランド像を確立する口火を切ったモデルだ。

美しく、楽しいクルマではあるが、その後のモデルほど興奮を誘うものではない。それは、想像通り。

DB1の価値とは、その希少性と、カリスマ性あるブランドとしての第一章を飾ったところにある。それ以上、何が必要だろうか。

アストン マーティン2リッター・スポーツ「DB1」のスペック

価格:新車時 3000ポンド(43万円)/現在 50万ポンド(7150万円)
生産台数:15台
全長:4470mm
全幅:1702mm
全高:1397mm
最高速度:149km/h
0-96km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1143kg
パワートレイン:直列4気筒1970cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps/4750rpm
最大トルク:18.6kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

おすすめ記事

 
最新試乗記

クラシックの人気画像