従来の「給油時間」へ最接近 ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(2) 2t切りは期待できない

公開 : 2024.02.16 19:06

2tを切るタイカンは期待できない

アップデート後のタイカンは、クロスオーバー・ワゴンのクロスツーリスモで約2300kg。航続距離や最高出力、装備水準を高めつつ、15kgも軽量化された。車重へ腐心した結果といえる。

バッテリーEVの設計に対し、ギークが続ける。「1g毎に戦いです。120kWhや150kWhという容量のバッテリーを積んだライバルが、市場に登場しています。長く走れても、重りを載せて運転しているのと同じです」

ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)
ポルシェタイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)

「車重が増えると、強力なブレーキも必要です。さらに車重が増え、衝突構造も強化しなければならず、悪循環になります」

この事実を踏まえ、2tを切るタイカンは期待できないと、ギークは認める。「現在の技術では不可能です。カーボンファイバーを多用すれば可能でも、それでは一層特別なクルマになってしまいます。上質さの問題も出てきます」

簡素なインテリアだったら、中国市場でスポーティな高級車としての地位は確立できないだろう。他の市場でも。少し内容が膨らんだが、約6時間、こんな会話が続いた。

「最終的には、できないことはないでしょう。しかし、できることがすべて意味を持つとも限りません。慎重に見極める必要があります。今後数年間、その市場が存在するのかどうかも」

ポルシェは、2024年にタイカンを広範囲にアップデートした。だが2019年にも、当時のバッテリーEV市場を正確に読み、需要を予想し、結果へ結びつけてきた。

長く続くモデルラインとして維持する

最後に、仕事が完了したと喜ぶには、まだまだ早いことを強く滲ませた。「長く続くモデルラインとして維持することへ、強い関心を寄せています。911のように。新モデルの導入時は、3年や4年だけの提供を考えてはいません」

数週間以内に、プロトタイプではないアップデート後のタイカンを、AUTOCARでは運転できるだろう。混沌とし競争の激しいカテゴリーで、プレゼンスを維持できる内容なのか、見極められるはず。

ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後/欧州仕様)
ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後/欧州仕様)

期待を膨らませつつ、ロサンゼルスへの帰路へ着く。途中でもう1度充電する必要があるようだが、充電器の近くに評価4.2星の中華レストランがあることを、タイカンは教えてくれた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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