従来の「給油時間」へ最接近 ポルシェ・タイカン 改良版の試作車へ試乗(2) 2t切りは期待できない

公開 : 2024.02.16 19:06

4年間に15万台売れたタイカンがアップデート 事実上まったく新しいモデル 航続距離679km 最高出力952ps 急速充電320kW 英国編集部が試作車へ試乗

高速走行・高速充電 従来の給油時間へ最も接近

300kW台で充電可能な充電器は、まだ数が少ない。それでも短時間での充電は、長距離ユーザーにとって、大きな変革になることは間違いない。ポルシェタイカンのアップデートを率いたケビン・ギーク氏は、所有する訴求力の強化になると指摘する。

「高速走行・高速充電。これが、お客様にとって自動車を使いやすく便利にする組み合わせだと考えます。内燃エンジン車の給油へ必要な時間と、常に比較されるのです」

ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)
ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)

充電ステーションへ到着した時の駆動用バッテリーは、残量6%だった。だが14分後に、80%へ回復してみせた。正直なところ、隣のカフェへ立ち寄る暇はなかった。

市場に存在するバッテリーEVの中で、アップデート後のタイカンが、従来の給油時間へ最も接近したことは明らかだろう。いよいよ、内燃エンジン車より目的地まで高速・短時間に移動できる可能性が出てきた。

ポルシェは、充電ステーションのマッピングサービスも改善した。事前に稼働している充電器の数を確かめられたり、付近の写真を確認したり、駆動用バッテリーの温度を最適化することが可能だという。近くにあるレストラン情報も確かめられる。

独自の急速充電ステーション網を展開する、アメリカの自動車メーカーへ影響を受けたのか、とギークへ尋ねる。「テスラが理由ではありません。お客様から、充電器の場所がわかりにくいという声があったのです。それを簡単にすることが目的でした」

軽くない車重という避けられない足かせ

日常的な利便性だけでなく、優れたタイカンは、優れたポルシェであるべき。使い勝手の良いバッテリーEVなだけでなく、魅力的なスポーツカーとしての期待にも応える必要がある。

心配は不要かもしれない。新しいタイカン・ターボSは、最高出力が開放されるオーバーブースト・モード時に952psを発揮。リマックも焦らせる、0-100km/h加速2.4秒がうたわれる。

ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)
ポルシェ・タイカン(フェイスリフト後のプロトタイプ/北米仕様)

ニュルブルクリンクのラップタイムを更新した、一層高性能なターボGTも控えている。こちらは1000馬力を軽く超えるらしい。猛烈なスタートダッシュに悶える様子の動画が、ユーチューブへ無数にアップされる日も遠くない。

上質な乗り心地を求めて、アップデート後のタイカンにはエアサスペンションが標準装備。旋回時のロールや、加減速時のピッチなどをほぼ打ち消す、アクティブライド・システムもオプションで用意される。

カリフォルニア州の高速道路では、磨かれた動的能力や安定性を、つぶさに確認することはできなかった。しかし、従来のタイカンが最高の操縦性を叶えたバッテリーEVであることは、AUTOCARでは確認済み。期待を裏切る可能性は、極めて低いだろう。

ただし、車重という避けられない足かせを、ギークは認める。「大きなバッテリーを搭載することで、車重は増えます。ポルシェにとって、求める姿とはいえません」

「わたしたちは、機敏なスポーツカーを望んでいます。車重には、批判的な視点を持つことがとても大切だと考えます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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