【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #42】1989年ポルシェ911カレラ4(964)前編「第3世代となるフルモデルチェンジ」

公開 : 2026.10.18 09:11

世界的な人気モデルとして支持され、サーキットでも数えきれぬ栄光の記録を刻んできたポルシェ。日曜日の午前9時11分に公開する、そんなポルシェの足跡を膨大なアーカイブと共に振り返る連載です。#42は『1989年ポルシェ911(964)カレラ4』の前編です。

快適性への要望に応える

ポルシェは1989年モデルとして、1988年夏の終わり(ポルシェのモデルイヤーは工場の夏季休暇明けから切り替えられる)に、911の第3世代となるフルモデルチェンジされた新型を送り出す。

コードネームはタイプ964とされ、愛好家の間では以前の世代と区別するため『964』と呼ばれるようになる。

ポルシェ911カレラ4(964)
ポルシェ911カレラ4(964)    ポルシェ

1984年に930系の後継車として『タイプ964』の開発が始まった。これは、ポルシェ911のDNAを損なうことなく、高まる顧客の快適性への要望に応えることが課題とされた。顧客の要望のなかで重視されたのは、『夏と冬の空調機能の改善』および『ロードノイズの低減』だった。

ポルシェは964へのABSおよび4輪駆動(4WD)システムの導入に伴い、サスペンションの改良だけでなく、センタートンネルの高さも引き上げるためにボディを作り直した。

今後の排気ガス規制や安全規定に対応するため、空冷水平対向6気筒エンジンの排気量は3.6リッターに拡大されている。

930系の段階的な生産終了と同時に、ポルシェ911の誕生25周年を記念し、4輪駆動の911カレラ4が1988年に発表される。

用意されたのはマニュアル・トランスミッションを搭載する4輪駆動の『911カレラ4クーペ』のみだった。ポルシェが持つ最新のテクノロジーを投入した、イメージリーダー的な意味合いもあったといえる。

964カレラ4を象徴する最新の4WDシステム

964ではリアエンジン・レイアウトは継承されるが、4WDシステムを初めて搭載した911となる。

ウエット路面や滑りやすい路面でのハンドリング性能を高めることを目的に、グループBホモロゲート・モデルの959で得たテクノロジーを基に、量産モデル向けに再構築したフルタイム4WDシステムを採用。これにより直進安定性および旋回時の安定性は大きく改善された。

空力特性エアフロー確認時のショット。試作車のため928のホイールが組まれている。
空力特性エアフロー確認時のショット。試作車のため928のホイールが組まれている。    ポルシェ

ポルシェはこの革新的なシステムを、4輪すべてを管理する『差動制限(スリップ)制御』による駆動方式と呼ぶ。その仕組みは、まずマニュアル・トランスミッションから、遊星歯車セットで構成された縦置きセンターデフへ駆動トルクが伝達される。

フルタイム4WDシステムは、959の電子制御トルクスプリット・システムは使われず、通常フロントアクスルに31%、リアアクスルに69%の配分でトルクを伝達される。走行状況に応じてトルク配分が変化。その制御方式は革新的なもので、各輪のスリップはABSセンサーによって検知し、油圧式ロック機構によって制御された。

電子制御式の多板ロック機構がふたつ備わり、フロントアクスルへの駆動力配分および、リアアクスルの左右輪間の駆動力配分を制御する。

その結果、トラクション、走行安定性、コーナリング時のハンドリング、そして荷重変化への応答性が常に最適化された。センター・コンソールに配されたロータリースイッチを操作すれば、40km/h以下であれば、すべてのディファレンシャルをロックすることができた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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