特集 「ワールド・ソーラー・チャレンジ」 壮絶な戦いに潜入

公開 : 2017.12.10 11:40

最も奇妙な光景

「参加する若者たちは、何かひとと違ったことをやろうという意欲を持った将来有望なひとたちなのです。われわれはこのレースで、ソーラーに関して驚くほどのノウハウを集めてきました。どんな自動車メーカーでも今まで使ったことがないようなものです」

「資金が潤沢なチームほど有利なのは明らかですが、ルールはとても厳格です。どの参加チームも、スタート・ラインをまたぐ前にこのルールに従うことを宣言しなければなりません」

レースはダーウィンのステート・スクエアで始まる。

モータースポーツで最も奇妙な光景のひとつだろう。ホイールスピンもなく、おなじみの金髪ガールもいない。もちろん、エグゾーストの咆哮もまったくない。

数千人の観客がお行儀よく拍手する中、各車は出発する。後ろでは15人のオーケストラがアバの曲を奏でている。72km/hで何時間も走り続ける480kgのクルマの運転席に座ってみると、このレースがスピードと同時に忍耐力のレースであることがわかりかけてきたのは、実際に自身で挑戦したからであった。

キャビンの温度は50℃に達する。追い越していくトラック-4縦列トレーラーだ-の風圧は、カーボンファイバー製のマシンにはすごく応える。わたしはランブル・ストリップに乗り上げて一度ならず路肩にそれてしまったり、死んだカンガルーに危うくぶつかりそうになった。

更に悪いことに、わたしの乗った2シーター・クーペには、ダッシュボードに雑に取り付けられたプラスチックの旅行用ファン以外にはベンチレーションが全く付いていない。水のボトルはシートの背に結び付けられているが、中の液体は生温くまったく飲む気がしない。

わたしはクイーンズランドを本拠地とするクレナジー・チーム・アローの4人のドライバーのひとりだ。勇敢にもチームは、ダーウィンからキャサリン(奥地と熱帯の境界だ)までのレグの運転をわたしに任せてくれた。

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