欧州責任者が語る『フィアット』のあるべき姿 原点に立ち返り再出発 課題はパンダ後継車 新型『グリズリー』の車名に込めた意味とは

公開 : 2026.09.10 17:05

ステランティス傘下で再出発を果たしたフィアットは、小型車メーカーとしての原点に立ち返り、500ハイブリッドやグランデパンダなど新型車を続々と展開しています。欧州責任者のガエターノ・トーレル氏が構想を語りました。

ブランドのアイデンティティ

再び「ビッグ」な存在になるために、フィアットは「スモール」という自身のアイデンティティを受け入れる必要があった。

これは一見すると矛盾しているように聞こえるかもしれないが、イタリアの国民的自動車ブランドとして全盛期を迎えてから数十年にわたる苦闘の末、フィアットはついに成功への道を見出した。それは、これまで最も得意としてきたこと、すなわち小型車の生産に注力することだった。

フィアットの欧州責任者ガエターノ・トレル氏とグランデパンダ
フィアットの欧州責任者ガエターノ・トレル氏とグランデパンダ

フィアットの「名車」と呼ばれるモデルを思い浮かべれば、その多くは小型車だろう。近年の大型車の開発は、いずれも成功には至らなかった。

そこで、ステランティス傘下で再出発を果たしたフィアットは、自社の強みに注力するようになった。『500e』や『パンダ』に加え、『500ハイブリッド』、『グランデパンダ』などが登場し、超小型四輪車『トポリーノ』も好調な売れ行きを見せている。フィアットの現在のモットーは「ビッグ・イン・スモール」だ。

この再出発を牽引しているのは、約15年にわたりCEOを務めてきたオリヴィエ・フランソワ氏だが、彼は8月末に退任を発表した。しかし、同社の欧州部門責任者であるガエターノ・トレル氏もまた、重要な役割を果たしてきた人物だ。

フランソワ氏の壮大な構想とマーケティング手腕だけでなく、トレル氏の細部へのこだわりと販売手腕も過小評価すべきではない。そう聞くと堅物な印象を受けるかもしれないが、トレル氏はしばしば演劇的な身振りとともに、情熱を持って自身の想いを語る。

今やステランティスを支える存在に

その紛れもないイタリア人的な気質は、いかにもフィアットの精神と相性が良さそうだ。

しかしながら、トレル氏は実際にはフォードで20年以上勤め、わずか10年前に当時のフィアット・クライスラー・オートモービルズに移籍し、2021年に現在の役職に就いたばかりだ。それでも、彼はフィアットで働いていること、そして同社の再出発における自身の役割を誇りに感じているようだ。

フィアット・グランデパンダ
フィアット・グランデパンダ

「わたし達は砂漠を横断し、生き残ったのです」とトレル氏は言う。

「今、フィアットブランドを本来あるべき位置に据えたい。それは長い道のりですが、わたし達が向かっている方向にはとても満足しています。フィアットは現在、ステランティスの欧州における成長の原動力です。毎月10万台以上を安定して販売しているのです」

販売を牽引しているのはグランデパンダだ。トレル氏によると、欧州でよくみられる法人向けの販売ではなく、一般消費者への直接販売の割合が高いという。

「ブランドの強さを測るには、B2C(ビジネス・トゥ・コンシューマー=企業が一般消費者に対して提供する製品やサービス)のシェアを見るべきです。なぜなら、ブランドを選ぶのは一般消費者だからです」とトレル氏。

今年に入ってから、フィアットは欧州のB2C販売台数ランキングで5位についており、昨年の13位から順位を上げている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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