【タイヤはなぜ黒い?】黒さの秘密は「カーボンブラック」 いっぽうで「ホワイトカーボン」も

公開 : 2020.01.05 07:20  更新 : 2021.10.09 23:55

クルマにとって(いまのところ)欠かせないのは「タイヤ」です。しかし考えてみると、タイヤはなぜ黒いのでしょう。黒さの秘密は黒さの秘密は「カーボンブラック」。いっぽうで「ホワイトカーボン=シリカ」も。

そもそもタイヤはなぜ黒いのか?

text:Kenji Momota(桃田健史)

タイヤはどうして黒いのか?

それは、タイヤの主な材料であるゴムに、カーボンブラックを配合するからだ。

タイヤの主な材料であるゴムに、カーボンブラックを配合するからタイヤは黒い。
タイヤの主な材料であるゴムに、カーボンブラックを配合するからタイヤは黒い。

ゴムだけでは弾力はあるが、引っ張るとちぎれやすい。

カーボンブラックはゴムの分子どおしをつなぐ役目となり、ゴムの強度が一気に上がるのだ。

カーボンブラックとは、炭素の構造も持つ黒い粉。少しでも手につくとその部分が黒くなってしまい、石鹸をつけて洗ってもなかなか取れない。塗装や黒インクに使われる素材である。

そんな黒いカーボンブラックに対して、ホワイトカーボンとも呼ばれる白い粉がある。

カーボンブラックに対して、ホワイトカーボン

ホワイトカーボンとも呼ばれる白い粉。名前を、シリカという。

タイヤに関する記事や広告で目にしたことがある方もいるかもしれない。

タイヤ用ゴムの原材料。 出典:横浜ゴム
タイヤ用ゴムの原材料。 出典:横浜ゴム    桃田健史

シリカの構造は、カーボンブラックによく似ている。ただし、シリカ単独ではゴムとは結合しない。

そのため、シリカとゴム分子をつなぐために、シランカップリング剤という液体が必要になる。

さらに、シリカとゴムの結合が強固になるのが、「加硫(かりゅう)」という製造工程だ。

シリカとゴムをしっかり混合して、さらに板状に伸ばして、それから大きな金型に入れて、硫黄を含めて加熱する。

すると、タイヤトレッド面が形成された、タイヤの形状になるのだ。

各社のタイヤづくり 秘伝のレシピあり

シリカを入れると、タイヤの転がり抵抗が上がり低燃費なタイヤになる。

だが、タイヤにはグリップ力も必要だ。

横浜ゴムの平塚製作所で実際に目にしたシリカ。
横浜ゴムの平塚製作所で実際に目にしたシリカ。    桃田健史

タイヤのグリップ力を高めながら、転がり抵抗を減らすというのは、相反する性能を追うことになる。

そのため、天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、シリカの配合でタイヤメーカー各社は独自の手法があり、また同じメーカーでも製品の特性によって配合割合は大きく変わる。

こうした手法を、タイヤメーカーでは「レシピ」と呼ぶ。化学反応を起こすという点で、料理でのレシピと同じ考え方である。

もちろん、前述の加硫も、料理での焼く/煮る/蒸すといった加熱の行為と同じなのだ。

筆者はこれまで、世界各地でタイヤの製造現場を見てきた。加硫工程については写真撮影が厳禁で、記事にする際も加硫の温度や時間はもとより、加硫の機器の数や配置についてまでメーカー側の厳しいチェックが入った。

今回、横浜ゴムの平塚製作所で実施された、メディア向けの技術説明会では、シリカやブラックカーボンの現物を見せながら、シリカの配合に関する様々な実験データ、画像、そして動画が公開された。

各メーカーでの競争が激しさを増す低燃費タイヤについて、メディア側の技術に対する理解が深まる貴重な機会であった。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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