世界最大の寒冷地テスト施設に潜入 極寒の世界 秘密は「スノーハウ」 前編

公開 : 2019.11.16 08:50

一年中寒冷地テストが行えるというフィンランドにあるテストワールドに潜入してきました。これまで主にタイヤテストに使用されてきたこの施設ですが、近年進む電動化や開発サイクルの短縮化によって需要が高まっており、さらなる拡張が計画されているようです。

真夏の寒冷地テスト

11月になると、各自動車メーカーのエンジニアたちは北極圏で行う寒冷地試験に向けて、暖かい下着と分厚いジャケットを準備するのが習わしとなっている。

そして、偽装をほどこしたプロトタイプが、冷間スタートや加速試験、スタビリティーコントロールのセッティング、アンチロックブレーキシステムやハンドリングの評価を行うために出てきた公道上で目撃されるのはお馴染みの光景かも知れない。

例え7月であっても中はマイナスの世界だ。
例え7月であっても中はマイナスの世界だ。

一方で、外は真夏の天候だというのに、内部は雪と氷に覆われた素晴らしい屋内の施設で、夏の間からすでにこうしたテストに取り組んでいるエンジニアたちがいる。

北極圏から290km、フィンランド北部のイバロ村にあるテストワールドは世界で唯一ともいえる巨大な寒冷地テスト用施設であり、今回われわれにはその内部を見学する機会が与えられた。

「夏の間中、スノータイヤやハンドリング、スタビリティーコントロール、冷間スタートといったテストを行っています」と話すのは、テストワールドで責任者を務めるヤンネ・ソールヤルビだ。「それに、室内でテストする限り、パパラッチを心配する必要もありません」

1991年、イバロ空港に隣接した屋外のテストコースが開設されたことでテストワールドの歴史は始まっている。その後、ミラトラックスと呼ばれるふたつ目の施設を数km離れた場所にオープンすると、2012年には初のインドアコースを設置している。

英国との繋がり ますます忙しく

そして、ここには英国との繋がりもある。

かつてGMのテストコースだったベッドフォードシャーのミルブルック・プルービンググラウンドが、2015年にテストワールドを買収しており、その1年後にはミルブルック自身もエガムに拠点を置く精密機器メーカーであるスペクトリス社へと売却されている。

有難いことに、アイスドライビングで傷ついたのはプライドだけだった。
有難いことに、アイスドライビングで傷ついたのはプライドだけだった。

「自然の雪だけを使用しているため、つねに一定のコンディションになるように施設を管理しています。この一定のコンディションであるということが、エンジニアにとっては非常に重要なことなのです」とソールヤルビは言う。

テストワールドでは、雪と氷に覆われたコースで数十年に渡って培ってきた知見を「スノーハウ」と呼んでおり、このスノーハウが4月から11月の間、室内のスノーコンディションを最高の状態に保つことを可能にしている。(番外編参照)

いまここには70名のエンジニアがいるが、テストが最盛期を迎えるとその数は250名以上にも膨れ上がる。これまでのところ、作業の80%はスノータイヤにおけるEUのR117基準への適合試験に代表されるタイヤ性能テストだという。

だが、電動パワートレインの開発が進むとともに、開発サイクル自体が短くなるにつれ、車両試験の比率が増加しており、その結果、寒冷地テストが年間を通じて行われるようになっている。さらに、エンジンのWLTP基準適合テストの増加もこの傾向に拍車をかけている。

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