【詳細データテスト】BMW M5 走りは全方位で進化 実用性の犠牲は最小限 まさに究極のM5

公開 : 2021.07.24 20:25  更新 : 2021.07.25 20:10

走り ★★★★★★★★★★

結局、問題は重量だ。このクルマはたしかに、BMW M史上最強のロードカーかもしれない。とはいえ、満タンで1940kgというテスト車の実測値は、2018年に計測したF90型のオリジナルM5とまったく変わらない。

また、トルクバンドは広がっているが、76.5kg-mというピーク値はやはりベースモデルと同じである。となると、加速タイムにどれほどの向上がみられるのか、疑問に思うところだ。

重量やピークトルクはベーシックなM5と変わらない。しかし、エンジンはより磨きがかかり、トルクの精密さやバンドの広さが増した特性や、高められたレスポンスにより加速性能は向上。サウンドもよりその気にさせるものになっている。
重量やピークトルクはベーシックなM5と変わらない。しかし、エンジンはより磨きがかかり、トルクの精密さやバンドの広さが増した特性や、高められたレスポンスにより加速性能は向上。サウンドもよりその気にさせるものになっている。    LUC LACEY

ところが、である。ベーシックなM5は3年前のテストにおいて、3.3秒で97km/h、7.5秒で161km/hに達したが、今回のCSはそれぞれ3秒フラットと6.8秒でこなしてみせたのだから、ちょっとした驚きだ。

ただし、テスト車のタイヤがミシュラン・パイロットスポーツ4Sだったことは一考に値する。これがピレリPゼロ・コルサを履く仕様だったら、コンマ1~2秒は余分にかかっていただろう。

ただし、どちらのタイヤを履いていても、この2t近い4シーターの高級セダンは、制限速度までスーパーカー並みの加速をみせる。ゼロヨンはポルシェタイカン・ターボSと同タイムで、ゼロ1000はポルシェより速い。

あらゆる点で地上最強の4ドアかといえば、そんなことはない。エンジン車でもEVでも、このM5 CSをパワーやスピードで凌ぐクルマはわずかながら存在する。しかし、その差はわずかなもので、取るに足らないものだと思える程度。なにより、公道上でその差に気づくことはないはずだ。

全開加速は、まさしく息を呑むような体験だ。BMWがこのエンジンに施したアップデートは、これまでの現行M5のいかなるバリエーションより優れた中間域のスロットルレスポンスを狙ったもので、さらにレッドゾーンの7200rpmでのよりフリーなパワーデリバリーも目指した。そして、明らかにこれまでより本格的な、ソソるサウンドもこのCSは手に入れている。

トルク特性は幅を持たせた怒涛のような感覚は影を潜め、右足の踏み込み量に対して正確にトルク量が規定されるような精密なものとなった。そして、6000rpmを超えてもそれが続く。いまだに、それを叶えるターボのハイパフォーマンスユニットはきわめて少ない。

それに伴うV8サウンドは、M5コンペティションと比べても生のままという感じがやや強い。これはステンレス素材を用いた新設計のアクティブエキゾーストを装着しただけでなく、車体全体から遮音材を減らしたことにもよる。また、カーボンファイバーのボンネットも、エンジン音をワイルドにする一因だ。

最初にパワーをかけるときには、吸気音も大きく聞こえてくる。そこから回転を上げるにつれて、タービンの叫びもより激しく響く。これに、先に述べたドラマティックなエキゾーストノートが重なるのだ。

さらに、ここにデジタル合成されたエンジン音が添加されるのだが、これもほかのM5よりずっと効果的に使えている。それらすべてが相まって、じつに好ましい、正真正銘のパフォーマンスカーらしいキャラクターを演出してくれるのだ。

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