【ワンオフも制作可能】アストン マーティンの「Q」 V600 007エディション V12 スピードスター 前編

公開 : 2021.10.02 11:05  更新 : 2021.10.12 16:23

映画007の主人公といえば、Q、ジェームズ・ボンド。アストン マーティンにも、Qと呼ばれる部門が存在します。その仕事の一部を英国編集部がご紹介します。

アストン マーティンに存在するQ部門

執筆:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
映画007の主人公といえば、ジェームズ・ボンド。通称Qと呼ばれる人物だ。そんな007でボンドカーといえば、アストン マーティンが真っ先に思い浮かぶ読者も多いはず。

その社内に、「Q」と呼ばれるビスポーク(特注)部門が存在することはご存知だろうか。サイモン・レーン氏は、その責任者を務めている。

アストン マーティンV12 スピードスターとヴァンテージ V600
アストン マーティンV12 スピードスターとヴァンテージ V600

ニューポート・パグネル工場でのワークス・テーラード部門を経て、アストン マーティンは2012年にQ部門をゲイドン本部に立ち上げた。映画007のように、独創的で冒険的で、人を驚かせるようなクルマを生み出すために。

Q部門は、大胆にモディファイされた特注モデルを製造するため、ライセンスを取得。ロイヤル・カスタマーの要望へ、臨機応変に対応している。

ワンオフ・モデルも制作可能

プレミアム・ブランドの多くが、同様の顧客サービスを提供している。しかし、Q部門の特長と呼べるのが、楽しさを感じさせるアプローチだろう。サイモン氏自身も、そう考えているようだ。

「対応可能な範囲では、競合ブランドの同等部門より、限界とする領域は広いと思います。つまり完全に1台可切りの、ワンオフ・モデルも制作は可能です」

アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー
アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー

現在のQ部門には、3種類のラインが用意されている。Qコレクションは、標準のアストン マーティン向けの特注部品やオプションの製作。Qコミッションは、カラーやトリムを中心に、より自由度の高いカスタマイズを請け負ってくれる。

そして、最も自由度が高いのがQアドバンスド・オペレーションズ。「用意されているメニューとは、まったく異なるモノが欲しい、人とはまったく違うコトがしたいというお客様向けです」。とサイモン氏は説明する。

実際、完全に別注のパワートレインからボディワーク、フルカスタマイズの車両まで、領域は多岐に渡る。今回はジェームズ・ボンドも羨むような、最高レベルの6モデルを紹介したいと思う。AUTOCAR流の、特別ミッションだ。

ヴァンテージ V600

1999年に少量生産された、当時世界で最もパワフルな量産車でもあったヴァンテージ V600。そのアストン マーティンをトリビュートし、2018年に制作された特別モデルが存在する。もともとは、1人の顧客による依頼がきっかけだったという。

「当初は、オリジナルのV600をベースにしたマシンが欲しいと、彼は話していたんです」。とサイモン氏が振り返る。「われわれは、量産モデルと同等のテストを経て、特注モデルの部品制作を行います。極めて高価になりかねません」

アストン マーティン・ヴァンテージ V600
アストン マーティン・ヴァンテージ V600

「彼は開発費用を負担し、ほかの購入希望者を見つけるのを手伝う、と話していました。開発からテストまでのコストを、7台のクーペと7台のコンバーチブルで分割できる可能性を意味しました」

その結果、最後にVHプラットフォームを使用した特別な14台が完成した。自然吸気のV型12気筒を搭載する、最後のヴァンテージにもなった。ボディは1999年当時のV600を彷彿とさせる姿へ、大幅に作り直された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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